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第11章(3)ヴァロンside

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父さんはそんな事思ったりしない。
きっと、否定してくれる。

……。
そう、思っていた。

のに……。


「……」

何も言わずに……。
父さんは揺れた瞳を、俺から目を逸らした。

……。

それだけ。
それだけ、なのに……心と身体が凍った。

動けなくて……。
俺は、ただその場に座り込んでた。


「……連れて行け」

シャルマのその命令に、父さんはもう抵抗する事もなく、黒スーツの男達に囲まれて連れて行かれる。

少しずつ遠くなっていく父さんの後ろ姿。
追いかけたいのに、さっきの沈黙の意味を知るのが怖くて……。俺は動けない。


「……リ、オ。……。
っ……リオッ!リオッ……待ってっ!!」

その声に、俺はようやくハッとした。

気付いたら、椅子から立ち上がった母さんが泣きながら慌てて……。父さんを追いかけようとしていた。


「っ……かあさんッ!!」

危ないっ……!!

って思った時には遅くて……。
母さんはシャルマに掴まれると、俺のすぐ近くに思いっきり突き飛ばされるように倒された。


「!……かあさん!
かあさん、だいじょうぶっ?!」

床に倒れ込む母さんを、俺は必死で支えながら呼びかけた。

苦しそうに、お腹を押さえて、うずくまるように身を縮ませて震える母さん。
そのすぐ真下の床には……。
今まで見た事もない、おびただしい量の血が、みるみるうちに……広がっていった。

幼い俺には、それが何を意味する事までは分からなかったが……。
母さんに大変な事が起こっている事だけは理解出来て、無我夢中で叫んだ。

でも……。


「っ……たすけてッ!
おねがいっ!おいしゃさんをよんでッ?!
かあさんをたすけてよッ……!!」

「……。用はすんだ。帰るぞ」

シャルマは、顔色一つ変えずに……。
ぐちゃぐちゃにしたその場に俺達を残して、去って行った。

……
…………。
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