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第9章(1)アカリside
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しおりを挟む「……ちゃんと、契約したから。
絶対にアカリには手を出さない、って。俺が任務を果たしたら、帰れるから……」
「……」
何を、言ってるの?
ザワッと震える心の中に、思わず浮かんだ問い掛け。
だって、おかしい。
もう少し辛抱するのが、嫌なんじゃない。
ヴァロンを信じて待つ事が心配なんじゃない。
「大人しく、待ってて?
アカリの事は、何があっても護るから」
そう言って……。
俯いていた顔を上げて、微笑むヴァロンを見た瞬間。
今までに感じた事のない不安が……。
私の胸を過った。
……。
希望も絶望も、ないような。
全てを諦めているような、ヴァロンの瞳。
子供のように澄んでいるのに、曇りも濁りもないのに……。
その先の未来を映さず、今にも粉々に砕けそうな心の表れのようで……。
目の前のヴァロンは、以前よりも更に孤独に見えた。
「……っ。
何で、泣いてるの……?」
「!……え?」
思わず私の口から漏れた問い掛けに、ヴァロンがビクッと揺れて、一瞬戸惑って……。
すぐにまた、微笑んだ。
「泣いてないよ」
彼が、笑顔で私に言う。
私には、すぐに分かるのに……。
傷付いて、ボロボロの自分を隠して、微笑んでる。
”その子は、色素の薄い自分の髪を泥水で必死に黒くしようとしていました。
そうすれば、母親がきっと喜ぶのだと……。
父親のようになれば、きっと微笑ってくれると、信じていたんでしょうね。”
本当の自分を否定されるのが怖くて、自我を封じて……。仮面を被った、ピエロを演じてる。
「っ……嘘吐き」
ヴァロンの冷たく冷え切った手を自分の頬に当てて、私は言った。
……
…………。
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