79 / 214
第4章(2)ヴァロンside
2-2
しおりを挟む
【休憩スペース】
「……驚いたわ。
貴方、ちゃんと謝罪や感謝の言葉が言えたのね」
「!……は?」
壁際の片隅にある長椅子にミネアと座って言われた、第一声がそれだった。
余計な話をするつもりはなかったし、一応万が一の事を考えて警戒していた俺は、予想外の言葉に思わず「は?」と声を漏らして顔をミネアに向ける。
すると、彼女はクスクスと笑いながら首を横に振った。
「あ、ごめんなさい。変な意味じゃないの。
……ただ。昨夜の口調とは全然違ったから、少し驚いただけ」
「……」
ミネアのその言葉に、驚いたのはこっちの方だと思わずにはいられない。
昨夜の俺をヴァロンだと気付いた時もそうだったが、社長令嬢でもない、次期社長の姿でもない彼女の姿に……。何だか妙な親しみを感じてしまう。
「……。
話って、なんだ?」
だが、和んでいる場合ではない。
なるべく早目に用件を聞いてこの場を去ろうと顔を逸らして話を切り出すと、ミネアは更に俺を驚かせる発言をする。
「そんなに邪険にする事ないじゃない。
せっかく貴方の事、見直したのにな~」
「……どういう意味だ?」
「……。
昨日、貴方が一緒に居た女性。
あの人、遊び相手じゃなくて……奥様、よね?」
「……」
問い掛けに答えず、無言のまま横目で隣を見ると……。ミネアは微笑みながら、俺の左手を指差していた。
俺の左手薬指に光る、結婚指輪。
ミネアに会ってしまうかも、という可能性が頭にありながら……。この旅行中、絶対に外したくなかったアカリとの夫婦の証。
……いや。
本当は、仕事中だっていつも外したくなかった。
夢の配達人として、そして家族や大切な人の為だと言い聞かせながら……。
本当は、自分の気持ちに正直にいたかった。
「……驚いたわ。
貴方、ちゃんと謝罪や感謝の言葉が言えたのね」
「!……は?」
壁際の片隅にある長椅子にミネアと座って言われた、第一声がそれだった。
余計な話をするつもりはなかったし、一応万が一の事を考えて警戒していた俺は、予想外の言葉に思わず「は?」と声を漏らして顔をミネアに向ける。
すると、彼女はクスクスと笑いながら首を横に振った。
「あ、ごめんなさい。変な意味じゃないの。
……ただ。昨夜の口調とは全然違ったから、少し驚いただけ」
「……」
ミネアのその言葉に、驚いたのはこっちの方だと思わずにはいられない。
昨夜の俺をヴァロンだと気付いた時もそうだったが、社長令嬢でもない、次期社長の姿でもない彼女の姿に……。何だか妙な親しみを感じてしまう。
「……。
話って、なんだ?」
だが、和んでいる場合ではない。
なるべく早目に用件を聞いてこの場を去ろうと顔を逸らして話を切り出すと、ミネアは更に俺を驚かせる発言をする。
「そんなに邪険にする事ないじゃない。
せっかく貴方の事、見直したのにな~」
「……どういう意味だ?」
「……。
昨日、貴方が一緒に居た女性。
あの人、遊び相手じゃなくて……奥様、よね?」
「……」
問い掛けに答えず、無言のまま横目で隣を見ると……。ミネアは微笑みながら、俺の左手を指差していた。
俺の左手薬指に光る、結婚指輪。
ミネアに会ってしまうかも、という可能性が頭にありながら……。この旅行中、絶対に外したくなかったアカリとの夫婦の証。
……いや。
本当は、仕事中だっていつも外したくなかった。
夢の配達人として、そして家族や大切な人の為だと言い聞かせながら……。
本当は、自分の気持ちに正直にいたかった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
【完結】「離婚して欲しい」と言われましたので!
つくも茄子
恋愛
伊集院桃子は、短大を卒業後、二年の花嫁修業を終えて親の決めた幼い頃からの許嫁・鈴木晃司と結婚していた。同じ歳である二人は今年27歳。結婚して早五年。ある日、夫から「離婚して欲しい」と言われる。何事かと聞くと「好きな女性がいる」と言うではないか。よくよく聞けば、その女性は夫の昔の恋人らしい。偶然、再会して焼け木杭には火が付いた状態の夫に桃子は離婚に応じる。ここ半年様子がおかしかった事と、一ヶ月前から帰宅が稀になっていた事を考えると結婚生活を持続させるのは困難と判断したからである。
最愛の恋人と晴れて結婚を果たした晃司は幸福の絶頂だった。だから気付くことは無かった。何故、桃子が素直に離婚に応じたのかを。
12/1から巻き戻りの「一度目」を開始しました。
裏切りのその後 〜現実を目の当たりにした令嬢の行動〜
AliceJoker
恋愛
卒業パーティの夜
私はちょっと外の空気を吸おうとベランダに出た。
だがベランダに出た途端、私は見てはいけない物を見てしまった。
そう、私の婚約者と親友が愛を囁いて抱き合ってるとこを…
____________________________________________________
ゆるふわ(?)設定です。
浮気ものの話を自分なりにアレンジしたものです!
2つのエンドがあります。
本格的なざまぁは他視点からです。
*別視点読まなくても大丈夫です!本編とエンドは繋がってます!
*別視点はざまぁ専用です!
小説家になろうにも掲載しています。
HOT14位 (2020.09.16)
HOT1位 (2020.09.17-18)
恋愛1位(2020.09.17 - 20)
幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
葉月 まい
恋愛
近すぎて遠い存在
一緒にいるのに 言えない言葉
すれ違い、通り過ぎる二人の想いは
いつか重なるのだろうか…
心に秘めた想いを
いつか伝えてもいいのだろうか…
遠回りする幼馴染二人の恋の行方は?
幼い頃からいつも一緒にいた
幼馴染の朱里と瑛。
瑛は自分の辛い境遇に巻き込むまいと、
朱里を遠ざけようとする。
そうとは知らず、朱里は寂しさを抱えて…
・*:.。. ♡ 登場人物 ♡.。.:*・
栗田 朱里(21歳)… 大学生
桐生 瑛(21歳)… 大学生
桐生ホールディングス 御曹司
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
番が見つかったら即離婚! 王女は自由な平民に憧れる
灰銀猫
恋愛
王女でありながら貧しい生活を強いられていたエリサ。
突然父王に同盟の証として獣人の国へ嫁げと命じられた。
婚姻相手の王は竜人で番しか愛せない。初対面で開口一番「愛する事はない」と断言。
しかも番が見つかるか、三年経ったら離婚だそう。
しかしエリサは、是非白い結婚&別居婚で!とむしろ大歓迎。
番至上主義の竜人の王と、平民になることを夢見る王女の、無関心から始まる物語。
ご都合主義設定でゆるゆる・展開遅いです。
獣人の設定も自己流です。予めご了承ください。
R15は保険です。
22/3/5 HOTランキング(女性向け)で1位になれました。ありがとうございます。
22/5/20 本編完結、今後は番外編となります。
22/5/28 完結しました。
23/6/11 書籍化の記念に番外編をアップしました。
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
隣人はクールな同期でした。
氷萌
恋愛
それなりに有名な出版会社に入社して早6年。
30歳を前にして
未婚で恋人もいないけれど。
マンションの隣に住む同期の男と
酒を酌み交わす日々。
心許すアイツとは
”同期以上、恋人未満―――”
1度は愛した元カレと再会し心を搔き乱され
恋敵の幼馴染には刃を向けられる。
広報部所属
●七星 セツナ●-Setuna Nanase-(29歳)
編集部所属 副編集長
●煌月 ジン●-Jin Kouduki-(29歳)
本当に好きな人は…誰?
己の気持ちに向き合う最後の恋。
“ただの恋愛物語”ってだけじゃない
命と、人との
向き合うという事。
現実に、なさそうな
だけどちょっとあり得るかもしれない
複雑に絡み合う人間模様を描いた
等身大のラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる