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第5章(3)弥夜side
5-3-4
しおりを挟む交わす言葉なんて考えてない。
会えたらどうするか?なんて、考えてなかった。
ただ……ただ、会いたかった。
お父さん。
僕はただ、貴方にもう一度会いたかったんだ。
もう一度、ただーー……。
「ーーっ、弥夜ッ!!!!!」
ーー……ッ?!!
背後から聞こえた怒鳴り声と同時に、僕は力強い力で後ろに引っ張られた。
その怒鳴り声と、引っ張られた反動でドシャッ!!と地面に倒れ込んだ衝撃で、ハッとした僕の瞳に映るのは……。
「っ、……紫夕、さん?」
僕の腕を掴んで一緒に地面に倒れ込んでいた、紫夕さんの姿だった。
な、なんで……?
何故、紫夕さんがここに……?
突然の出来事に……。信じられない出来事に、僕は思わず呆然と紫夕さんを見つめてしまっていた。
すると、
「!!っ、危ねぇ……ッ!!!!!」
叫んだ紫夕さんがまた僕を引き寄せて、そのまま抱き締めるようにしながら地面を一緒に転がった。
その直後の事だ。僕がさっきまで居た場所に、ビシャンッ!!と鋭い棘のついた鞭のような蔓が打ち付けられたのは……。
そこでようやく、自分の身に迫っていた危険を悟った。顔を上げると、自分の周りを取り囲む森林湿地地帯の植物達が、いつの間にか不気味な魔物に姿を変えているではないか。
そして、さっき自分が本当の父親を見付け、足を踏み入れようとしていた先に続く地面を見ると、そこは酷い泥濘だった。もしもあのまま勢い良く飛び込んで足を取られていたら、植物の魔物達の格好の餌食になっていたであろう。
危なかった。守護神の隊員になってから初めて、身の危険を感じてゾクッとした。
けれど、僕はある事をすぐに思い出してハッとする。
「お父さん……っ、お父さんはッ?!」
いつの間にか、霧は完全に晴れていた。視界を遮る白いモヤはもうない。
しかし、自分が先程見た父親の存在も見当たらなかった。
さっき確認した場所にも。その付近にも。人間よりも遥かに良い視力で見渡しても、何処にも見当たらなかった。
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