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第3章(4)マリィside
3-4-2
しおりを挟む春来君は春来君として接する、と決めたばかりだったのに……。
思わず口から飛び出したその注意口調は、かつて同じ歳ながらも少々だらしがなかった和希に向けていたものと全く同じだったのだ。
普通、歳下になら……。紫愛ちゃんや弥夜君に言うように、「コラコラ!箸を使わなきゃダメよぉ~!」って軽く叱るみたいに、普段のアタシならば言えた筈なのに……。彼には、つい、そう言ってしまっていた。
全然、ダメ……じゃない。
アタシはまだ、和希の事を引きずってるのーー?
忘れられない。嫌な過去を思い出す。
和希と喧嘩別れして、その直後に彼が帰らぬ人となってしまった……悲しい過去を。
今でこそ受け入れてくれる仲間が増えて、物腰が柔らかくなったアタシだけど、昔は敵ばかりの周囲にピリピリしていてついついキツい性格と口調になりがちだった。
特に和希には……。幼馴染みで、いつも優しい彼に甘えて、アタシはつい可愛くない物言いばかりしてしまっていた。
その結果。
和希とは気不味いまま別れて、それが最期になってしまった。
大切な彼を亡くして、長い間ずっと後悔して、ようやく乗り越えてきたと思っていたのに……。
まだまだ全然前に進めていない自分を痛感して、嫌になる。
食事に誘ったのはアタシ。
それなのに、ほぼ初対面に近いアタシにいきなりキツい口調と態度を取られた春来君。
彼は関係ないのに、ただアタシの私情で八つ当たりのように怒られて、きっと良い気分ではないだろうと思った。
けど。自己嫌悪に落いるアタシに、春来君は一瞬「あ、いけない」と言う表情をするものの、「ゴクンッ」と唐揚げを飲み込んだ後すぐに微笑って言った。
「んぐっ、美味い!!」
「!っ、……え?」
「あ、ごめんなさい!あんまり美味しそうだったから、つい……。確かに、行儀悪かったですよね?気を付けますっ。
でも、コレ、本当に美味いです!玉子焼きも食べていいですかっ?次はちゃんと、箸で食べるんで!」
アタシの厳しさに動じる事もなく、春来君は箸を持つとそう言った。
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