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第15章(3)ユイside
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しおりを挟む「けれど、大切なものを全ては護れない。ならば、その中で1番大切なものを選ぶしか……
ーー未来はない」
「!?ッ……」
え?消え、た……ーーッ?!
それは、一瞬の出来事。
相手との実力が、天と地程違うのだと思い知るには十分の出来事だった。
"時間を稼げたらいい"……。
そんな考えは甘かった。
『未来はない』
そう、私の右耳に囁かれたのは……目の前のディアスさんが消えたと思った直後の事。
まるで書物に描かれていた"忍び"と呼ばれる人物のような、物音一つしない俊敏な動き。
何が起こったのか、すぐには分からなかった。
気付いた時にはあっという間に背後に回られて、ヒヤッとした金属の感触が喉元に当てられていた。
「っ……」
冷や汗が頬をつたり、鼓動がドクンッと大きく身体に響く。どんどん冷たくなっていく身体は、私の本能が命の危険を悟っている証。
「今すぐ退いて下されば、命を奪うような真似はしません。
……さぁ、お帰りなさい」
「!……ーーッ」
冷たい声で囁かれて、心の悲鳴が口から飛び出そうになった。
怖いッ、怖いッ、怖いッ……!!
逃げたい!今すぐッ……ここから離れたい!!
敵わない相手だと、最初から分かっていた。
それ故に、逃げないと……覚悟を決めて臨んだ筈だった。
……なのに。
背後から感じる殺気に、負けそうになる。
……でも。
っ……でも!ここで退いてしまったら、私はあの日から全く変われないッ。
それに、もう二度と大切な人に会う資格がない
ッ!!
そう思った私の頭の中には、二人の人物が浮かんでいた。
1人は、父親であるヴァロンさん。
もう1人は……私をドン底から救ってくれた、レイさん。
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