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第10章(4)マオside
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しおりを挟む確かに、周りのみんなは僕を躊躇なく”マオ様”と呼ぶ。
会社に復帰した時も、みんなが「おかえりなさい」「お待ちしてました」って迎えてくれて……。僕の過去の活躍を、褒めてくれて……。
過去の雑誌や新聞にも、確かに僕の写真や名前もいくつかあった。
”マオ”って呼ばれていた、ような気もする。
……でも。
ずっと、違和感があって堪らなかった。
全く戻らない記憶に、自分が”マオ”だと確信を持てる事なんて何一つなくて。
いつも、自分が自分ではない気がしていた。
けど、それを口にしたら捨てられると思った。
そう思ったら、怖くて……。今まで口に出来なかったんだ。
そんな、不安定だった中。
ここ最近になって自分の中に浮かび上がり始めた、”暖かい何か”……。
あれが夢でも、幻想でも、妄想でもないのだとしたら……!!
「ディアスッ……僕に、何か隠してる事……ないかっ?」
真実を知る事が、怖くないか?と問われたら、正直怖い。
もしみんなが何かを隠しているのだとしたら、それは僕にとって良くない事だから……。だから、みんなが伝えないでいてくれるのかも知れないから……。
それでも知りたくて、僕は伏せていた視線をディアスに向けた。
ドキンドキンッと響く鼓動に震えを抑えて待つ、返答までの時間。
束の間の沈黙が長く感じていた僕に、ディアスがフッと優しく微笑った。
「私がマオ様に隠し事など、する訳がないではありませんか。
……私の事を、お疑いですか?」
「っ……」
優しさの中に、悲しみが込もったディアスの瞳。
ディアスはいつも、僕を優しい瞳で……。
ミネアさんと同じ瞳で、僕を見てくれる。
意を決して尋ねたのに、その勇気さえもこの瞳で見つめられると、”傷付けてはいけない”、”裏切ってはいけない”って想いが溢れてきて……。逆らえない。
「……ううん。
ごめん、っ……変な事、言った」
独りぼっちになる勇気すらなくて、首を横に振って俯いた。
そんな僕に、ディアスは手袋をはめ直してくれると優しく肩を叩く。
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