23 / 213
第10章(3)マオside
3-2
しおりを挟むキャナルさんも僕のタキシード姿を見て満足そうに頷くと、何やら”いい事を思い付いた”とでも言う感じで間近にやってくる。
嫌な、予感。
「そうですわね、あとは……。
髪型とこの眼鏡をなんとかしましょうか?」
「!っ……えッ?」
キャナルさんの言葉に、ギクリッと心臓が何かを察したように悲鳴をあげ出した。
「まさか」って思った時には遅くて……。
真ん前に立ったキャナルさんが、僕を暴いていくーー。
「式当日は、この眼鏡はやめてアイレンズに換えましょう!それから……。
お顔がよく見えるように、前髪もこうして上げるようにセットして……」
「っ……っ~~~」
言葉と同時に眼鏡を強引に外されて、キャナルさんの手が、僕の顔を隠している長い前髪を上げていく……。
そして、息が止まりそうな位に緊張が最高潮になった時。
僕の気持ちとは反対に、見ていた周りの係の女性からは「キャーッ!」という黄色い歓声が上がった。
「ま、まぁ!っ……」
1番間近で僕を見ていたキャナルさんは、顔を真っ赤にして、ぽ~っと見上げたまま固まる。
「う、嘘っ……カッコいい~」
「なんで普段あんな恰好してるのっ?勿体な~い!」
係の女の子達も、僕を見て頬を染めながらヒソヒソ話していた。
その光景に、息が、つまる。
この時、僕にはみんなの言葉なんて聞こえていなかったのだ。
自分に自信がなく、本来の姿を祖父から「醜い!隠せ!」と言われ続けていた僕にとって、今の状況は最悪だった。
チラチラと見られるのは、好奇や嫌悪の眼差し。
ヒソヒソと話されるのは、良くない事を言われているという認識しかなかったから……。
そんな僕に、追い討ちをかける、記憶の断片ーー。
『見ろよ、コイツ!』
『なんだ?この髪と瞳の色!』
ッ……ヤメテ、ミナイデッ……。
『これは珍品だ!高く売れる!』
『おら!お客様に顔を見せろ!!』
無理矢理に顔を見せられた”あの日”の光景と、今が、被る。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
〖完結〗幼馴染みの王女様の方が大切な婚約者は要らない。愛してる? もう興味ありません。
藍川みいな
恋愛
婚約者のカイン様は、婚約者の私よりも幼馴染みのクリスティ王女殿下ばかりを優先する。
何度も約束を破られ、彼と過ごせる時間は全くなかった。約束を破る理由はいつだって、「クリスティが……」だ。
同じ学園に通っているのに、私はまるで他人のよう。毎日毎日、二人の仲のいい姿を見せられ、苦しんでいることさえ彼は気付かない。
もうやめる。
カイン様との婚約は解消する。
でもなぜか、別れを告げたのに彼が付きまとってくる。
愛してる? 私はもう、あなたに興味はありません!
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
沢山の感想ありがとうございます。返信出来ず、申し訳ありません。
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
もうすぐ婚約破棄を宣告できるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ。そう書かれた手紙が、婚約者から届きました
柚木ゆず
恋愛
《もうすぐアンナに婚約の破棄を宣告できるようになる。そうしたらいつでも会えるようになるから、あと少しだけ辛抱しておくれ》
最近お忙しく、めっきり会えなくなってしまった婚約者のロマニ様。そんなロマニ様から届いた私アンナへのお手紙には、そういった内容が記されていました。
そのため、詳しいお話を伺うべくレルザー侯爵邸に――ロマニ様のもとへ向かおうとしていた、そんな時でした。ロマニ様の双子の弟であるダヴィッド様が突然ご来訪され、予想だにしなかったことを仰られ始めたのでした。
呪われ王子と呪具好き令嬢〜婚約破棄されたので呪われた王子の花嫁になります〜
束原ミヤコ
恋愛
キャストリン・グリンフェルは10歳の時に両親を馬車の事故で失い、グリンフェル公爵家にやってきた父の双子の弟とその妻と娘に公爵家を支配されてて居場所を失った。
叔父と叔母と従姉妹に虐げられて屋根裏部屋で過ごすが、15歳で王太子ルディクの婚約者に選ばれる。
それから三年後、キャストリンは婚礼の儀式の場で断罪されていた。
従姉妹マチルダを虐げた上に、王家の秘宝を盗んだのだという。
そしてキャストリンは、罰を受ける。
ルディクの兄、呪われた王子がいる呪いの塔で、呪われた王子の花嫁になるという罰を。
キャストリンは内心の喜びを隠し、呪いの塔に向かう。
そこは、屋根裏部屋で呪術に目覚め、こっそり家から抜け出しては呪いの研究と呪物集め没頭し、集めに集めた魔力を帯びた呪物を使い、魔道具師として活動していたキャストリンにとって──まさしく、聖地のような場所だったからだ。
生まれた時に呪いにかかった王子と、魔道具師であり呪物収集家の三度の飯よりオカルトが好きな令嬢の話です。
あなたの隣で初めての恋を知る
ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。
アリシアの恋は終わったのです【完結】
ことりちゃん
恋愛
昼休みの廊下で、アリシアはずっとずっと大好きだったマークから、いきなり頬を引っ叩かれた。
その瞬間、アリシアの恋は終わりを迎えた。
そこから長年の虚しい片想いに別れを告げ、新しい道へと歩き出すアリシア。
反対に、後になってアリシアの想いに触れ、遅すぎる行動に出るマーク。
案外吹っ切れて楽しく過ごす女子と、どうしようもなく後悔する残念な男子のお話です。
ーーーーー
12話で完結します。
よろしくお願いします(´∀`)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる