216 / 231
第10章(1)レンハside
1-4
しおりを挟むその場所は、この蓮華国を一望出来るわしの部屋の窓辺で……。お祖母様とよく、そこから国を眺めて話をした想い出の場所だったのだ。
『お祖母様が言ってるよ。
「わかちゃん、ごめんね。この国をどうかよろしくね」……って』
不思議だった。
ツバサの言葉と一緒に、わしには確かにお祖母様の声が聞こえた。
すると、やっと涙が溢れてきて……わしはお祖母様が亡くなってから初めて人の前で泣いた。
ツバサはそんなわしの頭をずっと撫でてくれていて……。泣き止んだ後は、手を繋いで一緒に窓辺から蓮華国を眺めてくれた。
……
…………そうじゃ。
あの時から、ずっとずっとーー……。
「その時からずっと、わしはツバサが好きじゃ」
ツバサと出逢えたから、今の自分が在る。
よその国の者が参加する事は掟に反する事から、わしが主になる洗礼の儀を受ける頃にはもうツバサはヴァロン殿と共に蓮華国を去ってしまっていたが……。いつか必ず、また会えると信じていた。
そして此度、再び会う事が出来た。
「ツバサは覚えておらぬかも知れんがな。わしはそれでも構わーー……」
「ーーそんな事、絶対にないですよ!」
!っ、え……?
言葉を遮って、隣でずっと話を聞いていたレノアーノ様がわしの手を両手で握り締めながら言った。
驚いた。ツバサに想いを寄せる彼女。そんな彼女が、別の女からツバサが好き、と言う事やその想い出話を聞きたくなんてないと思っていた。
しかし、レノアーノ様は違った。
「それ、ツバサに話しましょうっ?確認しましょうよ!」
「……は?」
「彼、時々ちょっと鈍い事があるし、ああ見えて不器用だから……。自分からは絶対に話したりしないけど、蓮葉様から話せば、絶対にすぐ思い出すと思います!」
「……」
「ねっ?帰ったら、ツバサに話しましょう?」
そう言って、無邪気に、曇りのない笑顔を向けてくるレノアーノ様。
何故、恋敵であるわしにそんな表情が出来るのかーー?
自分の方がツバサに愛されているという、絶対の自信からーー……?
いや。
そうではない、と。わしにはすでに分かっていた。けれど、わしはあえて聞いてみる事にした。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説

誰も信じてくれないので、森の獣達と暮らすことにしました。その結果、国が大変なことになっているようですが、私には関係ありません。
木山楽斗
恋愛
エルドー王国の聖女ミレイナは、予知夢で王国が龍に襲われるという事実を知った。
それを国の人々に伝えるものの、誰にも信じられず、それ所か虚言癖と避難されることになってしまう。
誰にも信じてもらえず、罵倒される。
そんな状況に疲弊した彼女は、国から出て行くことを決意した。
実はミレイナはエルドー王国で生まれ育ったという訳ではなかった。
彼女は、精霊の森という森で生まれ育ったのである。
故郷に戻った彼女は、兄弟のような関係の狼シャルピードと再会した。
彼はミレイナを快く受け入れてくれた。
こうして、彼女はシャルピードを含む森の獣達と平和に暮らすようになった。
そんな彼女の元に、ある時知らせが入ってくる。エルドー王国が、予知夢の通りに龍に襲われていると。
しかし、彼女は王国を助けようという気にはならなかった。
むしろ、散々忠告したのに、何も準備をしていなかった王国への失望が、強まるばかりだったのだ。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました
土広真丘
ファンタジー
神と交信する力を持つ者が生まれる国、ミレニアム帝国。
神官としての力が弱いアマーリエは、両親から疎まれていた。
追い討ちをかけるように神にも拒絶され、両親は妹のみを溺愛し、妹の婚約者には無能と罵倒される日々。
居場所も立場もない中、アマーリエが出会ったのは、紅蓮の炎を操る青年だった。
小説家になろうでも公開しています。
2025年1月18日、内容を一部修正しました。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。


【完結】君のことなんてもう知らない
ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。
告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。
だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。
今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、新たな恋を始めようとするが…
※カクヨムにも投稿始めました!アルファポリスとカクヨムで別々のエンドにしようかなとも考え中です!
カクヨム登録されている方、読んで頂けたら嬉しいです!!
番外編は時々追加で投稿しようかなと思っています!
髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜
あめ
ファンタジー
髪の色がとてもカラフルな世界。
そんな世界に唯一現れた白髪の少年。
その少年とは神様に転生させられた日本人だった。
その少年が“髪の色=愛の証”とされる世界で愛を知らぬ者として、可愛がられ愛される話。
⚠第1章の主人公は、2歳なのでめっちゃ拙い発音です。滑舌死んでます。
⚠愛されるだけではなく、ちょっと可哀想なお話もあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる