片翼を君にあげる②

☆リサーナ☆

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第10章(1)レンハside

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その場所は、この蓮華国を一望出来るわしの部屋の窓辺で……。お祖母様とよく、そこから国を眺めて話をした想い出の場所だったのだ。

『お祖母様が言ってるよ。
「わかちゃん、ごめんね。この国をどうかよろしくね」……って』

不思議だった。
ツバサの言葉と一緒に、わしには確かにお祖母様の声が聞こえた。
すると、やっと涙が溢れてきて……わしはお祖母様が亡くなってから初めて人の前で泣いた。

ツバサはそんなわしの頭をずっと撫でてくれていて……。泣き止んだ後は、手を繋いで一緒に窓辺から蓮華国を眺めてくれた。

……
…………そうじゃ。
あの時から、ずっとずっとーー……。

「その時からずっと、わしはツバサが好きじゃ」

ツバサと出逢えたから、今の自分が在る。
よその国の者が参加する事はおきてに反する事から、わしが主になる洗礼の儀を受ける頃にはもうツバサはヴァロン殿と共に蓮華国を去ってしまっていたが……。いつか必ず、また会えると信じていた。
そして此度こたび、再び会う事が出来た。

「ツバサは覚えておらぬかも知れんがな。わしはそれでも構わーー……」

「ーーそんな事、絶対にないですよ!」

!っ、え……?

言葉を遮って、隣でずっと話を聞いていたレノアーノ様がわしの手を両手で握り締めながら言った。
驚いた。ツバサに想いを寄せる彼女。そんな彼女が、別の女からツバサが好き、と言う事やその想い出話を聞きたくなんてないと思っていた。
しかし、レノアーノ様は違った。

「それ、ツバサに話しましょうっ?確認しましょうよ!」

「……は?」

「彼、時々ちょっと鈍い事があるし、ああ見えて不器用だから……。自分からは絶対に話したりしないけど、蓮葉レンハ様から話せば、絶対にすぐ思い出すと思います!」

「……」

「ねっ?帰ったら、ツバサに話しましょう?」

そう言って、無邪気に、曇りのない笑顔を向けてくるレノアーノ様。

何故、恋敵であるわしにそんな表情が出来るのかーー?
自分の方がツバサに愛されているという、絶対の自信からーー……?

いや。
そうではない、と。わしにはすでに分かっていた。けれど、わしはあえて聞いてみる事にした。
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