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第10章(1)レンハside
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しおりを挟む生まれてすぐに母を亡くしていたわしにとって、お祖母様はずっと傍に居て、育ててくれた大好きな親代わり。
しかし、そんなお祖母様が亡くなり……。しかもその直後に、蓮華国の主になる事がすぐに決まった。
悲しむ間もなく、淡々と、まるで作業のように決まっていくそんな状況に心が全く追い付けなくて……。わしは、主になる為の洗礼を受ける事を拒み、塞ぎ込んでいた。
そんな時だった。
瞬空が、自らが憧れていた伝説の夢の配達人と謳われていたあの人を蓮華国に招いたのは……。
そして、その時にヴァロン殿と一緒に来たのが、当時6歳のツバサだった。
『こういう時は、子供同士に任せるのが1番だ!』
ヴァロン殿の提案で、部屋にはわしはツバサと二人きりにさせられた。
しかし、わしも頑固で……。大人の思う通りになんてなりたくなくて、部屋の片隅で布団に包まり頑なに動こうとしなかった。よそ者を受け入れる気もなければ、絶対にわしの気持ちなんて分かってくれない相手に心を開くつもりなんてなかった。……けど。
『"わかちゃん"』
っーー……え、っ?
そう呼ばれて、わしは思わず顔を上げた。
何故ならそれは、お祖母様が二人きりの時にだけ呼んでくれたわしのあだ名だったのだ。わしの幼名である若葉を、お祖母様がそう優しい声で呼んでくれるのが大好きだった。
でも、今自分の目の前に居るのは……。いつの間にかさっきまで着けていた眼帯を外し微笑む、虹彩異色症の少年だ。お祖母様に公衆の面前では決して「わかちゃん」と呼ばれた事がなかったその呼び名を知る者は、この国の者でもいない。
それなのに、何故、この少年はーー……?
わしがそう思いながら、ただただ目を見開いて見つめていると、ツバサは言った。
『心配してるよ?君の事。お祖母様がとても心配してる。
今も君の事を見てるよ。そこに居るんだ』
そう言ってツバサが視線を向けた先を見て、わしはそれが嘘ではない事を確信した。
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