片翼を君にあげる②

☆リサーナ☆

文字の大きさ
上 下
209 / 231
第9章(4)ツバサside

4-2

しおりを挟む

「っ……ツ、……バサ?」

「……」

「そ、その瞳……っ、どうし……」

「下がってろ、ジャナフ」

俺はジャナフの言葉を最後まで聞かずに押し退けてセトに歩み寄る。すると、セトは震え上がりながらも狼達を俺にけしかけようと指示を出した。

「っ、お、お前達!ツバサアイツをやっちまえッ……!!」

その言葉に、狼達は唸り声を上げたまま俺に飛び掛かって来ようとした。だが……。

ーー愚かだな。

「……お前ら如きに俺がやれると思うのか?この、下級生物がッ」

俺がそう呟くと、ビクッとして足を止めた狼達は「キャウンッ」と尻尾を後ろ足の間に巻いて怯え始める。更に瞳を合わせて威圧をかければ、どんどんと後ろに下がっていくばかりだ。
それを見て慌てたセトが叫ぶ。

「っ……何やってんだ!!お前達ッ……行けよッ!!ツバサアイツをやれよッ……!!」

ああ、本当に……愚かな生き物だな。

そう思った俺は、自分が直接手を下すまでもないと思った。だから、セトがさっきまで従えていた狼達に言った。

「……さぁ、お前達。俺の手足となれ」

その言葉に、狼達はビクンッと反応すると……。一斉にセトの方に視線と身体を向けて、牙を剥き、激しい唸り声を上げ始める。

「っ、な、何だよッ……!お前達っ……どうしたんだよッ?!」

更に慌てるセト。
俺は、そんな奴に笑いながら言った。

「悪いな、セト。獣の扱いは、俺の方が上手い」

それ、が合図となり、狼達は一斉にセトに襲い掛かると、腕や脚に噛み付いた。痛みに耐え切れず悲鳴を上げたセトは地面に倒れて、そこに更に自由を奪うように狼達達が乗っかった。

すぐには楽にさせないーー。

ゆっくりと痛ぶってやろうと見ていると、ガッと誰かに腕を掴まれた。視線を向けると、そこに居たのは震えて涙を流しているジャナフ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長

五城楼スケ(デコスケ)
ファンタジー
〜花が良く育つので「緑の手」だと思っていたら「癒しの手」だったようです〜 王都の隅っこで両親から受け継いだ花屋「ブルーメ」を経営するアンネリーエ。 彼女のお店で売っている花は、色鮮やかで花持ちが良いと評判だ。 自分で花を育て、売っているアンネリーエの店に、ある日イケメンの騎士が現れる。 アンネリーエの作る花束を気に入ったイケメン騎士は、一週間に一度花束を買いに来るようになって──? どうやらアンネリーエが育てている花は、普通の花と違うらしい。 イケメン騎士が買っていく花束を切っ掛けに、アンネリーエの隠されていた力が明かされる、異世界お仕事ファンタジーです。 *HOTランキング1位、エールに感想有難うございました!とても励みになっています! ※花の名前にルビで解説入れてみました。読みやすくなっていたら良いのですが。(;´Д`)  話の最後にも花の名前の解説を入れてますが、間違ってる可能性大です。  雰囲気を味わってもらえたら嬉しいです。 ※完結しました。全41話。  お読みいただいた皆様に感謝です!(人´∀`).☆.。.:*・゚

荒雲勇男と英雄の娘たち

木林 裕四郎
ファンタジー
荒雲勇男は一日の終わりに眠りにつくと、なぜか見たこともない荒野のど真ん中。そこで大蛇の首と戦う少女エーラと出逢ったことをきっかけに、勇男による英雄たちの後始末紀行が幕を開けるのだった。

拝啓、王太子殿下さま 聞き入れなかったのは貴方です

LinK.
恋愛
「クリスティーナ、君との婚約は無かった事にしようと思うんだ」と、婚約者である第一王子ウィルフレッドに婚約白紙を言い渡されたクリスティーナ。 用意された書類には国王とウィルフレッドの署名が既に成されていて、これは覆せないものだった。 クリスティーナは書類に自分の名前を書き、ウィルフレッドに一つの願いを叶えてもらう。 違うと言ったのに、聞き入れなかったのは貴方でしょう?私はそれを利用させて貰っただけ。

転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す

エルリア
ファンタジー
【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】 転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた! 元の世界では疎まれていても、こっちの世界なら問題なし。 相場スキルを駆使して目指せ夢のマイショップ! ふとしたことで異世界に飛ばされた中年が、青年となってお金儲けに走ります。 お金は全てを解決する、それはどの世界においても同じ事。 金金金の主人公が、授かった相場スキルで私利私欲の為に稼ぎまくります。

君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】 ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る―― ※他サイトでも投稿中

伯爵夫人のお気に入り

つくも茄子
ファンタジー
プライド伯爵令嬢、ユースティティアは僅か二歳で大病を患い入院を余儀なくされた。悲しみにくれる伯爵夫人は、遠縁の少女を娘代わりに可愛がっていた。 数年後、全快した娘が屋敷に戻ってきた時。 喜ぶ伯爵夫人。 伯爵夫人を慕う少女。 静観する伯爵。 三者三様の想いが交差する。 歪な家族の形。 「この家族ごっこはいつまで続けるおつもりですか?お父様」 「お人形遊びはいい加減卒業なさってください、お母様」 「家族?いいえ、貴方は他所の子です」 ユースティティアは、そんな家族の形に呆れていた。 「可愛いあの子は、伯爵夫人のお気に入り」から「伯爵夫人のお気に入り」にタイトルを変更します。

拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~

藤原ライラ
ファンタジー
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――  子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。  彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。 「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」  四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。  そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。  文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!? じれじれ両片思いです。 ※他サイトでも掲載しています。 イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)

【完結】運命の番じゃないけれど

凛蓮月
恋愛
 人間の伯爵令嬢ヴィオラと、竜人の侯爵令息ジャサントは幼い頃に怪我を負わせた為に結ばれた婚約者同士。 竜人には運命の番と呼ばれる唯一無二の存在がいる。 二人は運命の番ではないけれど――。 ※作者の脳内異世界の、全五話、一万字越の短いお話です。 ※シリアス成分は無いです。 ※魔女のいる世界観です。

処理中です...