片翼を君にあげる②

☆リサーナ☆

文字の大きさ
上 下
206 / 231
第9章(3)ジャナフside

3-5

しおりを挟む

「オレはね、ツバサコイツが嫌いなんだよ」

「!っ、……嫌、い?」

「ああ。オレは誰よりも、ツバサコイツが憎いッ……!」

そう言い放つセトさんの瞳は、口元は笑っているのに冷たい。

何故ーー……?

それでも、ボクにはやはりツバサがそんな人に恨みを買うような人物には思えなかった。腑に落ちないボクが見つめたままでいると、それを察した様子のセトさんが語り始める。

ツバサコイツはね、ずっとオレをコケにしてたんだよ。
その証拠に、自分からはオレに話し掛けて来ない。自分の事は何一つオレに話さない。……辞める時だって、何一つオレに言わなかった」

「っ、……」

そう言ったセトさんを見て、ボクは微かに胸がズキッと痛んだ。
それはきっと、そう言ったセトさんの中に、怒りや憎しみ以外の感情が入り混じっている事に……気付いたから。

「そいつが辞めてから、オレがどんな扱いを受けたか分かるか?何処に行っても「ツバサの代わりに金バッジに昇格出来た夢の配達人」扱いだ」

一言一言、話される度に、想いが伝わってくるんだ。
"悲しい"。"寂しい"って、セトさんの感情が……。

「それでも、いつかは、って。そんな噂なんて消えて行くと思ってたよ。
……っ、けど!!ツバサそいつは戻って来やがったッ!!」

セトさんは声を上げた。
言葉だけを聞けば、それは勝手に夢の配達人を辞めたのに、また戻って来たツバサに対しての自分勝手さに関しての怒り。

「何食わぬ顔で戻って来て、アッシュトゥーナ家の……。いや、この国の未来の為にサリウス王子と勝負だっ?!ふざけるなよッ……!!」

けど、本当は違う。
セトさんは、泣いてる。

「あっという間にまた注目を集めて、最高責任者マスターや周りに助けてもらって……。ッ……何だよっ!ツバサコイツなんてっ……ただの、親の七光りのクセにッ!!」

怒り、憎しみ、嫉妬……。
その裏には、ツバサに何も言ってもらえなかった悲しみ。頼って貰えなかった寂しさが、確かに詰まっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

拝啓、大切なあなたへ

茂栖 もす
恋愛
それはある日のこと、絶望の底にいたトゥラウム宛てに一通の手紙が届いた。 差出人はエリア。突然、別れを告げた恋人だった。 そこには、衝撃的な事実が書かれていて─── 手紙を受け取った瞬間から、トゥラウムとエリアの終わってしまったはずの恋が再び動き始めた。 これは、一通の手紙から始まる物語。【再会】をテーマにした短編で、5話で完結です。 ※以前、別PNで、小説家になろう様に投稿したものですが、今回、アルファポリス様用に加筆修正して投稿しています。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

愛する貴方の心から消えた私は…

矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。 周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。  …彼は絶対に生きている。 そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。 だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。 「すまない、君を愛せない」 そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。 *設定はゆるいです。

【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~

tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。 番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。 ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。 そして安定のヤンデレさん☆ ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。 別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...