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第9章(2)ツバサside
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しおりを挟む俺は本当に自分の事ばかりで、相手の気持ちなんて考えないで……。自分が謝りたいから、自分がお礼を言いたいから、言葉を紡いでいただけなんだ。
ここ最近、自分の中で燻っている感情。そのせいで大切な人を傷付けた汚い自分を、セトに謝る事で許されたいと思っていたんだ。
「あ、そうだ!
サリウス王子との件で力を貸してくれて、本当にありが……」
「ーーもういいよ」
「!……え?」
そんな、相手とすれ違ったスカスカの言葉が届く訳ないとも……。
自分とも人とも向き合ってこなかった"これまでの俺の結果"が招いた結末がどんなものなのかも、知らなかったんだ。
もういいよーー。
セトが言ったその言葉の本当の意味にすら、俺はこの時すぐには気付けない。
「もう、いい」
「セト?」
「すんだ事だからな。……もう、いい」
自分の都合の良いように解釈して、彼の「もういい」を、分かってくれたんだ、と……。許してくれたんだ、と思ってたんだ。
だから、俺は微笑った。
「っ、セト……。ありがとう!」
笑顔でお礼を言って、勝手に少しだけ救われた気になっていた。
そして、これからセトともまた仲良くやっていけると……思ってたんだ。
もう、俺とセトが繋がる人生は決まっていたと言うのにーー……。
ズボンのポケットに入れていたポケ電が「ヴヴッ」と震える。それは、見張りの交代をする為に2時間間隔で設定していたアラーム。
「!……あ。
セト、ごめん。今任務中なんだ、そろそろ戻らないと」
ポケ電のアラームを止めて再びポケットにしまうと、俺はもう一度微笑って言った。
「会えて嬉しかったよ、ありがとう!
良かったら、任務が終わったらまた会おう」
そう言って、背を向けて駆け出そうとした時だった。
「……"また"、なんてないよ。ツバサ」
ッーー……え、っ?
背後から聞こえるセトの声と同時に、辺りから「グルルルルッ……」と言う獣の……。犬科の動物の唸り声が聞こえた。
思わず足を止めると、いつの間にこんなに集まって来ていたのだろうか?数匹の狼達が四方八方から歩み寄って来ていた。
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