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第9章(2)ツバサside
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そして、今日、再びセトに会う事が出来た。
能力の事で不安定になって、ぐしゃぐしゃで、ドロドロだったけど……。いや、だからこそかも知れない。
セトの姿を目にしたら、素直に嬉しかった。思わず微笑みが溢れて俺が歩み寄ると、セトは最初に会った時みたいに驚いた表情をしていた。
少し間を置いて、口を開く。
「……。驚いた」
「え?」
「初めて見たよ。ツバサの笑顔」
「あ、……っ」
そう言われて、何だか恥ずかしくなった俺の顔はカアッと少し赤く染まる。
そんな俺を見て、セトが言葉を続けた。
「そんな表情も初めて見る。
ツバサ、ずいぶん変わったね」
「っ……」
「一緒に居た、"アイツ"のおかげ?」
「!……え?」
「肌が少し黒い、黒髪の……」
呟くように紡がれるセトの言葉に、俺の頭に浮かぶのはジャナフの顔。
確かに、それは当たっていた。
初めは港街に来たばかりで困っていたジャナフを助けてあげたくて、安心させてやりたくて微笑ってた。
でも、今は……。上手く言えないけど、何だか他の人とは違う気がして、一緒に居いると楽しくて、自然と笑顔になれるんだ。
セトがどんな想いでそんな事を聞いてきたのか気付かなかった俺は、その質問に何気なく答えた。
「そうかも、知れない」
自分が傷付く事には敏感なクセに、人がどんな事で傷付くのか?、と言う事に鈍感だった俺の言葉や行動。
昔も今も、それに気付ける程の余裕と優しい心があれば、きっと俺とセトの再会は違うものだったんだと思う……、…………。
「ーー……オレには、なかなか心開いてくれなかったのにな」
「っ、……それ、は……ごめん。あの頃は俺、色々……あって、……」
苦笑いしながら呟かれるセトの言葉に、俺はそう、言葉を濁して弁解するしか出来なかった。
「あと、一度辞めた時も、何も言えなくてごめんっ……。その、色々あって……」
「……。
色々、ばっかりだな」
「っ、……ごめん」
繰り返し言ってしまう、「色々」と「ごめん」。
きっとそれは謝っているようで謝っていない、相手からしたら"たたの社交辞令"のように感じる、上部だけの言葉だと捉えられても仕方のない言葉だった。
そして、今日、再びセトに会う事が出来た。
能力の事で不安定になって、ぐしゃぐしゃで、ドロドロだったけど……。いや、だからこそかも知れない。
セトの姿を目にしたら、素直に嬉しかった。思わず微笑みが溢れて俺が歩み寄ると、セトは最初に会った時みたいに驚いた表情をしていた。
少し間を置いて、口を開く。
「……。驚いた」
「え?」
「初めて見たよ。ツバサの笑顔」
「あ、……っ」
そう言われて、何だか恥ずかしくなった俺の顔はカアッと少し赤く染まる。
そんな俺を見て、セトが言葉を続けた。
「そんな表情も初めて見る。
ツバサ、ずいぶん変わったね」
「っ……」
「一緒に居た、"アイツ"のおかげ?」
「!……え?」
「肌が少し黒い、黒髪の……」
呟くように紡がれるセトの言葉に、俺の頭に浮かぶのはジャナフの顔。
確かに、それは当たっていた。
初めは港街に来たばかりで困っていたジャナフを助けてあげたくて、安心させてやりたくて微笑ってた。
でも、今は……。上手く言えないけど、何だか他の人とは違う気がして、一緒に居いると楽しくて、自然と笑顔になれるんだ。
セトがどんな想いでそんな事を聞いてきたのか気付かなかった俺は、その質問に何気なく答えた。
「そうかも、知れない」
自分が傷付く事には敏感なクセに、人がどんな事で傷付くのか?、と言う事に鈍感だった俺の言葉や行動。
昔も今も、それに気付ける程の余裕と優しい心があれば、きっと俺とセトの再会は違うものだったんだと思う……、…………。
「ーー……オレには、なかなか心開いてくれなかったのにな」
「っ、……それ、は……ごめん。あの頃は俺、色々……あって、……」
苦笑いしながら呟かれるセトの言葉に、俺はそう、言葉を濁して弁解するしか出来なかった。
「あと、一度辞めた時も、何も言えなくてごめんっ……。その、色々あって……」
「……。
色々、ばっかりだな」
「っ、……ごめん」
繰り返し言ってしまう、「色々」と「ごめん」。
きっとそれは謝っているようで謝っていない、相手からしたら"たたの社交辞令"のように感じる、上部だけの言葉だと捉えられても仕方のない言葉だった。
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