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第9章(1)ジャナフside
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…………ツバサが走り去って行った方角を頼りに捜し回った。
見渡しながら走っていると、村から少し離れた場所に枯れ木が集うのが目に入る。
しかし、妙だ。
何故かその枯れ木の中に、一本だけ生き生きと生い茂る木がある。水気のない乾いた荒れ地なのに、それはあまりにも不自然な光景だった。
っ……何だろう?何かの怪奇現象?!
ま、まさか……お化け、とか、いないよねっ?
ゴクリッと唾を飲み、走っていた足を止めて、恐る恐るゆっくりと歩み寄った。
すると、フッと木の側に見える人影。一瞬ビクッとしてしまうが、そこに居たのは白金の髪をした……。そう、間違いなくツバサ。彼の後ろ姿だ。
見付けたーー!
ホッと一安心して、ゆっくり背後から近付いて声を掛けようと思った。けど、……。
「ーー久し振りだな、ツバサ」
ーー……ッ?
ボクよりも先に、誰かがツバサに声を掛けた。
条件反射で、咄嗟に歩みを止めたボクは木の影に隠れて様子を伺う。
誰ーー?
聞いた事がない声。
それに、ツンツンとした短髪の茶髪に、旅人のよにうな、狩人のような恰好をしたその容姿は初めて見る。男性で、歳は、ツバサやボクとそんなに変わらないようだけどーー……。
「!ーー……セト?」
疑問に思っていると、ツバサがその人の名前を呼んだ。
セト。それは少し前に、馬車での移動中にツバサから聞いた話の中に出て来た人物だった。
昔、夢の配達人だった頃に切磋琢磨し合った、数少ない歳の近い人だ、って……。
あの時は、ただ何気なく聞いてた。ツバサの過去の話が聞けて、むしろ楽しく聞いていた。
それなのに……。
「セト?本当に、セト……なのか?」
ツバサが彼の名前を呼ぶと、胸がズキッて痛んだ。
痛む胸を手で握り締めるようにして見ていると、最初は驚いた表情をしていたツバサが、嬉しそうに微笑った。
「セト!良かった!
会いたかった……ずっと、会いたかったんだ!」
声を弾ませて、笑顔になったツバサはセトさんに歩み寄る。
その瞬間。ボクは息をするのも苦しい位、胸が締め付けられた。
っ、見たくないーー。
そう感じたボクは、静かに後退りして……。少し離れると目を逸らすように振り返って、その場を走り去った。
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