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第8章(3)ツバサside
3-8
しおりを挟むでも、その父さんは、もういない。
『お前がその瞳を持って生まれて来たのには、絶対に何か意味があるんだ。
その能力が、いつか必ずお前を助けてくれる。その為にはーー……』
……
…………。
「っ……はぁ、はぁ、………ッ」
ジャナフから逃げるようにして辿り着いたのは、村から少し離れた枯れ木が集う場所だった。
おそらくは、元々は小さな森だったのだろう。雨季が少なく、すっかり枯れ果てた木々達。
けれど、……。
「……っ?!
……なん、だよっ……これっ」
目を疑う。
息が切れた身体を休める為に自分が身を預けて触れた木が、ホワッと暖かさを感じたと思ったら……蘇っていた。
俺が触れた枯れ木だけが、かつて在ったであろう姿を取り戻していたのだ。
水々しい幹に、青々と生い茂る葉。
信じられない現実に、見上げる俺からは全力で走ったからではない汗が、ツゥー……ッと、流れる。
能力を使った自覚はない。
しかも、これまでに自分が体験してきた能力でもない。
それは明らかに、新たに自分の中に目覚めてしまった能力だった。
「……。
っ……はは、何だよ。これ……」
自分の両手を見つめて、俺は笑った。
今と言い、さっきジャナフに触れられた瞬間に視えた映像と言い……。これまで、漆黒の瞳を塞いでいれば発動しなかった筈の能力が、抑えられなくなってきている。
「……、……けてっ」
ああ。
普通じゃなくても、涙は出るんだなーー……。
「っ……助けてよっ。父さんッ…………!」
両掌に落ちる涙は、独りじゃ受け止め切れなくて……。ただただ、どんどん、下へ、下へと、落ちて行くだけだった。
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