183 / 231
第8章(3)ツバサside
3-7
しおりを挟む子供は純粋だから、初めは俺が「ズルしてる!」って事から始まった。
喧嘩になって、揉み合って、言い合って……。そしたら、どんどんどんどん、みんなが俺に対して想っている事が聞こえてきた。
左右で瞳の色が違う事を不気味がられ。
孤立して、動物や植物を相手に話している様子を見られて不気味がられ……。
「ツバサ君、様子がおかしいんですよ?
一度こちらに受診する事をおすすめします」
保育所の先生が、母さんにそう言ってある書類を差し出してた。
今なら、分かる。それは精神科の病院の書類。
「必要ありません」って断る母さんに、先生は更にこう言った。
「ご家庭に何か問題があるんじゃないですか?」
そう言われた母さんは一瞬表情を変えたけど、すぐに微笑って、「本日で、息子をここに預けるのは辞めさせて頂きます」って、俺の手を優しく引いてくれて……。
帰宅途中、「夕飯何が食べたい?」とか、「帰ったら何の絵本読む?」とか……。楽しい話ばかりして、微笑ってくれた。
俺には、分かるのに……。
笑顔の裏で、母さんは泣いていた。
俺が異様な目で見られた事に悲しみ、悔しがりながらも、俺の為に微笑ってくれていた。
……もう、俺の事で悲しませたりしない。
他人の前で能力の事は言っちゃいけないんだ。隠さなきゃいけないんだ。
俺は、おかしいんだーー。
保育所に行けなくなった俺は、次の日から社長業をする父さんとずっと一緒に居るようになった。なるべく在宅で出来る事や、俺を連れてでも出来る仕事を選んでくれて、時々出張のついでに人が少ない自然の溢れる場所に連れて行ってくれた。
父さんと居るのが、1番楽だった。
父さんは俺と二人きりになると、率先して自分の能力を見せてくれた。
そして、俺と似た不思議な能力を持つ人達と交流させてくれたりした。
俺がなるべく自然に過ごせるように、してくれていたんだと思う。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。


五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

拝啓、大切なあなたへ
茂栖 もす
恋愛
それはある日のこと、絶望の底にいたトゥラウム宛てに一通の手紙が届いた。
差出人はエリア。突然、別れを告げた恋人だった。
そこには、衝撃的な事実が書かれていて───
手紙を受け取った瞬間から、トゥラウムとエリアの終わってしまったはずの恋が再び動き始めた。
これは、一通の手紙から始まる物語。【再会】をテーマにした短編で、5話で完結です。
※以前、別PNで、小説家になろう様に投稿したものですが、今回、アルファポリス様用に加筆修正して投稿しています。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる