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第8章(1)ツバサside
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しおりを挟むマリエル護衛をもっと安全に行うため、『マリエルになるべき気がつかれない道具』が完成した。
「よし、ドルトンさんで実験してみよう!」
新しい道具を実戦で使う前には、必ず実験が必須。
事前に設定の準備をして、道具を装着。ドルトンさんを驚かせにいくことにした。
奥のドルトンさんの作業場に移動する。
「ドルトンさん、ちょっといいですか?」
「ん? なんだ、“サラの嬢ちゃん”か? ハルクなら奴の作業場にいるぞ」
「いえ、私はサラでないですよ、ドルトンさん」
「ん? 何かの冗談か? その声も、どこから、どう見てもサラの嬢ちゃんだろ?」
真面目なサラは冗談を言わない。だからドルトンさんは首を傾げながら、不思議そうにこっちを見てくる。
よし、実験は成功だ。
これ以上騙すのは問題ななりそうだから、種明かしをする。
新しい道具の機能を解除だ。
ポワ――――ン
「ん? なっ⁉ ハ、ハルクだと⁉ どうして、サラの嬢ちゃんが、ハルクになったのだ⁉ これはどういうことじゃ……まさか魔族がワシを化かしにきたのか⁉」
まさかの現象にドルトンさんは目を見開き、言葉を失っている。
作業場あった魔戦斧を手にとり、こちらを威嚇してきた。
あっ……これはマズイ状況だ。
「間違いなくボクですよ! ハルクです! この新しい道具で、姿と声を変えていたんです!」
自分が本当にハルクあることを、慌てて証明する。
でも言ってから、ふと気がつく。こんな道具を見せたところで、魔族じゃないことの証明はできないのだ。
「むっ……その道具は⁉ そんな精密な鍛冶仕事をできるのは、ヤツだけだ。ふう……そうか、本物のハルクか。まったく驚かせやがって」
だがドルトンさんは信じてくれた。魔戦斧を置いて、深い息を吐き出す。
よく分からないけど誤解が解けて、本当によかった。
「すみません、驚かせて。まさか、そんなに信じるとは思わないで。ボクの予想では“少しだけ”サラに似ていた予定だったんですが」
「いや、いや。さっきの姿は、どこからどう見ても“サラの嬢ちゃんそのもの”だったぞ。いったい、その道具はなんだ⁉」
ドルトンさんはこちらに近づき、新しい道具をマジマジと見てきた。今度はちゃんと説明をしないと。
「えーと、これは魔道具を応用して作った鍛冶道具です。機能は『使用者の姿を、他人に似せる』です!」
マルキン魔道具店に『風景を一枚の紙に写す魔道具』と『絵を壁に透写する魔道具』が売ってあった。
ボクはその部品を使い、新たな道具を製造。事前に撮影した人物の容姿に、使用者を見せかける道具を作ったのだ。
さっきサラの顔と格好を、こっそりボクは撮影してきた。そのデータを使い、サラの格好に変身したのだ。
ちなみに声も同じように『音を少しだけ録音する魔道具』と『録音した音を再生する魔道具』を組みわせて、ボクの声をサラの声に変質させたのだ。
「……という訳です。機能は全部、市販の魔道具をそのまま応用しました」
今回の製造はそれほど難しい作業はしていない。
売り物の魔道具を分解して、パーツを取り出し少しだけ改造。
ミスリル・マジックミラーで変身できるように改造。あと超小型ミスリルモーターで声も変質にも改造しておいた。
ちなみにミスリル金属の保護のお蔭で、魔法による妨害や探知も受けつけない仕様だ。
他人の姿と声に変身できる道具……
――――その名も《怪盗百面相》だ!
どうですか、ドルトンさん。今の説明で分かってくれましたか?
「――――っ⁉」
説明を聞いて、ドルトンさんは固まっている。いったいどうしたんだろう。
「い、いや、どうしたのだろう、じゃないぞ、小僧⁉ オヌシはとんでもない性能の魔道具を、新たに作りだしたんじゃぞ! 自覚はあるのか?」
「えっ、『とんでもない性能の魔道具』をですか? “少しだけ”他人に変装できるだけの道具ですよ、これは?」
どうしてドルトンさんはここまで興奮しているのだろう。もしかしたら何か問題もあるのだろうか。
「ふう……本人とまったく同じ姿と声に変装でき、魔法による探知も不可能。そんな恐ろしい道具があったら、そんな城やお宝のある場所にも、当人は潜入可能なのじゃぞ!」
「あっ……そうか。でも、安心してください。使うには、特殊な認証取得機能があるので、悪用はできないです!」
買ってきた魔道具の中に『人を認識できる魔道具』があった。
今回はそれを組み込んでいるから、悪用される心配はないのだ。
「なるほど、それならひと安心じゃ。だが、とにかく、とんでもない魔道具を、いや……魔道具を超えた“超魔具”を作り出したモノだな、オヌシは」
ドルトンさんの言う“超魔具”とは魔道具と、鍛冶技術を組み合わせ名称なのであろう。呼び方が格好いいから、ボクも今度から使うことにしよう。
「ところで、その超道具《怪盗百面相》は、どう使うのじゃ?」
「とりあえず、マリエルが王都で行く先に出入りしている人物を、今後は撮影と録音してきます。明日以降は《怪盗百面相》を装備して、何気ない顔でマリエルに近辺にいる予定です!」
マリエルの王都でのスケジュールは把握済み。その利点を最大限に使い、先回りして準備をしていく。
彼女の護衛騎士や侍女。王城の騎士兵。王都の商館の関係者。色んな人物を、撮影していく予定だ。
ちなみに《怪盗百面相》は百人分の姿と声を記録可能。今後は常にマリエルの近くで、密かに護衛ができるのだ。
「ふむ、なるほど、そういう使い方か。気を付けて準備するのだぞ」
「たしかに、そうですね。それじゃ明日の分の準備に、行ってきます!」
ボクは工房を出発。向かう先は王都の“ある場所”だ。
こっそり撮影と録音をして、ついで情報も収集。変装してもバレないように、メモにとって整理しておく。
陽が落ちてから工房に帰宅。
夕食後は《怪盗百面相》を更に改造して、使いやすく調整する。
明日から絶対に失敗はできない。
集中して作業していると、あっとう間に夜はふけていく。
◇
翌朝になる。
今日はマリエルにとって大事な日。
彼女がミカエル城に登城して、現ミカエル国王に謁見する日なのだ。
ボクも朝から気合が入りまくり。
早朝から護衛の準備をして、朝食もしっかり食べておく。
執事セバスチャンさんには『今日は徒歩で外出するので、お構いなく』と伝えて、こっそりと庭の工房に向かう。
「サラ、ドルトンさん。それじゃ、マリエルの後を追いましょう!」
「はい、ハルク君。いよいよ王城に潜入するのですね。また秘密の通路を使うのですか?」
「ん、今日は違うよ。“ボクたち三人”は城の正門から、正々堂々と登城するよ」
「ん? “ボクたち三人”? ハルク、キサマ……まさか。ワシらも正面から行くのか⁉」
「はい、ドルトンさん。二人の分の《怪盗百面相》も作って、調整しておきました! さぁ、変装して三人でミカエル城に行きましょう!」
こうして王都でも最大の警備が厳しいミカエル城に、ボクたちは超魔具で潜入に挑むのであった。
「よし、ドルトンさんで実験してみよう!」
新しい道具を実戦で使う前には、必ず実験が必須。
事前に設定の準備をして、道具を装着。ドルトンさんを驚かせにいくことにした。
奥のドルトンさんの作業場に移動する。
「ドルトンさん、ちょっといいですか?」
「ん? なんだ、“サラの嬢ちゃん”か? ハルクなら奴の作業場にいるぞ」
「いえ、私はサラでないですよ、ドルトンさん」
「ん? 何かの冗談か? その声も、どこから、どう見てもサラの嬢ちゃんだろ?」
真面目なサラは冗談を言わない。だからドルトンさんは首を傾げながら、不思議そうにこっちを見てくる。
よし、実験は成功だ。
これ以上騙すのは問題ななりそうだから、種明かしをする。
新しい道具の機能を解除だ。
ポワ――――ン
「ん? なっ⁉ ハ、ハルクだと⁉ どうして、サラの嬢ちゃんが、ハルクになったのだ⁉ これはどういうことじゃ……まさか魔族がワシを化かしにきたのか⁉」
まさかの現象にドルトンさんは目を見開き、言葉を失っている。
作業場あった魔戦斧を手にとり、こちらを威嚇してきた。
あっ……これはマズイ状況だ。
「間違いなくボクですよ! ハルクです! この新しい道具で、姿と声を変えていたんです!」
自分が本当にハルクあることを、慌てて証明する。
でも言ってから、ふと気がつく。こんな道具を見せたところで、魔族じゃないことの証明はできないのだ。
「むっ……その道具は⁉ そんな精密な鍛冶仕事をできるのは、ヤツだけだ。ふう……そうか、本物のハルクか。まったく驚かせやがって」
だがドルトンさんは信じてくれた。魔戦斧を置いて、深い息を吐き出す。
よく分からないけど誤解が解けて、本当によかった。
「すみません、驚かせて。まさか、そんなに信じるとは思わないで。ボクの予想では“少しだけ”サラに似ていた予定だったんですが」
「いや、いや。さっきの姿は、どこからどう見ても“サラの嬢ちゃんそのもの”だったぞ。いったい、その道具はなんだ⁉」
ドルトンさんはこちらに近づき、新しい道具をマジマジと見てきた。今度はちゃんと説明をしないと。
「えーと、これは魔道具を応用して作った鍛冶道具です。機能は『使用者の姿を、他人に似せる』です!」
マルキン魔道具店に『風景を一枚の紙に写す魔道具』と『絵を壁に透写する魔道具』が売ってあった。
ボクはその部品を使い、新たな道具を製造。事前に撮影した人物の容姿に、使用者を見せかける道具を作ったのだ。
さっきサラの顔と格好を、こっそりボクは撮影してきた。そのデータを使い、サラの格好に変身したのだ。
ちなみに声も同じように『音を少しだけ録音する魔道具』と『録音した音を再生する魔道具』を組みわせて、ボクの声をサラの声に変質させたのだ。
「……という訳です。機能は全部、市販の魔道具をそのまま応用しました」
今回の製造はそれほど難しい作業はしていない。
売り物の魔道具を分解して、パーツを取り出し少しだけ改造。
ミスリル・マジックミラーで変身できるように改造。あと超小型ミスリルモーターで声も変質にも改造しておいた。
ちなみにミスリル金属の保護のお蔭で、魔法による妨害や探知も受けつけない仕様だ。
他人の姿と声に変身できる道具……
――――その名も《怪盗百面相》だ!
どうですか、ドルトンさん。今の説明で分かってくれましたか?
「――――っ⁉」
説明を聞いて、ドルトンさんは固まっている。いったいどうしたんだろう。
「い、いや、どうしたのだろう、じゃないぞ、小僧⁉ オヌシはとんでもない性能の魔道具を、新たに作りだしたんじゃぞ! 自覚はあるのか?」
「えっ、『とんでもない性能の魔道具』をですか? “少しだけ”他人に変装できるだけの道具ですよ、これは?」
どうしてドルトンさんはここまで興奮しているのだろう。もしかしたら何か問題もあるのだろうか。
「ふう……本人とまったく同じ姿と声に変装でき、魔法による探知も不可能。そんな恐ろしい道具があったら、そんな城やお宝のある場所にも、当人は潜入可能なのじゃぞ!」
「あっ……そうか。でも、安心してください。使うには、特殊な認証取得機能があるので、悪用はできないです!」
買ってきた魔道具の中に『人を認識できる魔道具』があった。
今回はそれを組み込んでいるから、悪用される心配はないのだ。
「なるほど、それならひと安心じゃ。だが、とにかく、とんでもない魔道具を、いや……魔道具を超えた“超魔具”を作り出したモノだな、オヌシは」
ドルトンさんの言う“超魔具”とは魔道具と、鍛冶技術を組み合わせ名称なのであろう。呼び方が格好いいから、ボクも今度から使うことにしよう。
「ところで、その超道具《怪盗百面相》は、どう使うのじゃ?」
「とりあえず、マリエルが王都で行く先に出入りしている人物を、今後は撮影と録音してきます。明日以降は《怪盗百面相》を装備して、何気ない顔でマリエルに近辺にいる予定です!」
マリエルの王都でのスケジュールは把握済み。その利点を最大限に使い、先回りして準備をしていく。
彼女の護衛騎士や侍女。王城の騎士兵。王都の商館の関係者。色んな人物を、撮影していく予定だ。
ちなみに《怪盗百面相》は百人分の姿と声を記録可能。今後は常にマリエルの近くで、密かに護衛ができるのだ。
「ふむ、なるほど、そういう使い方か。気を付けて準備するのだぞ」
「たしかに、そうですね。それじゃ明日の分の準備に、行ってきます!」
ボクは工房を出発。向かう先は王都の“ある場所”だ。
こっそり撮影と録音をして、ついで情報も収集。変装してもバレないように、メモにとって整理しておく。
陽が落ちてから工房に帰宅。
夕食後は《怪盗百面相》を更に改造して、使いやすく調整する。
明日から絶対に失敗はできない。
集中して作業していると、あっとう間に夜はふけていく。
◇
翌朝になる。
今日はマリエルにとって大事な日。
彼女がミカエル城に登城して、現ミカエル国王に謁見する日なのだ。
ボクも朝から気合が入りまくり。
早朝から護衛の準備をして、朝食もしっかり食べておく。
執事セバスチャンさんには『今日は徒歩で外出するので、お構いなく』と伝えて、こっそりと庭の工房に向かう。
「サラ、ドルトンさん。それじゃ、マリエルの後を追いましょう!」
「はい、ハルク君。いよいよ王城に潜入するのですね。また秘密の通路を使うのですか?」
「ん、今日は違うよ。“ボクたち三人”は城の正門から、正々堂々と登城するよ」
「ん? “ボクたち三人”? ハルク、キサマ……まさか。ワシらも正面から行くのか⁉」
「はい、ドルトンさん。二人の分の《怪盗百面相》も作って、調整しておきました! さぁ、変装して三人でミカエル城に行きましょう!」
こうして王都でも最大の警備が厳しいミカエル城に、ボクたちは超魔具で潜入に挑むのであった。
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