片翼を君にあげる②

☆リサーナ☆

文字の大きさ
上 下
149 / 231
第7章(1)ジャナフside

1-1

しおりを挟む

9月が終わって、10月も半ばになった。
僕とツバサは今馬車に乗って"ある場所"へと向かっている。
そのある場所とはーー……。

……
…………あ、でもまずは。
何故そのある場所とやらに行く事になったのか、を話そうと思う。

2週間程前、「休養が欲しい」と言ってずっと音信不通で姿をくらましていたツバサが、約10日振りに夢の配達人隠れ家に帰ってきた。
僕は嬉しくって嬉しくって、その姿を見つけた時は思わず駆け寄って抱き着いた。

でも、その時なんだか違和感を感じたんだ。
ツバサは「ただいま、心配かけてごめん」って、謝りながら微笑ってくれたけど……。その表情は、なんだか寂しそうで、悲しそうだった。

まだ落ち込んでるのかな?って思った。
けど、すぐにツバサは訓練を再開した。最高責任者マスターに頼んで、格闘や武器の扱い方の勉強を始めた。
その表情はとても真剣で、真っ直ぐで……。決して、やる気を失くしている様子ではなかったんだ。むしろ、前向きと言うか……。

でも、訓練終了後や休憩中に見せる、ふとした時の表情を見ていると、何だか僕は苦しくなる気がした。

……そして。
ツバサが帰って来て、また1週間位過ぎたある日。
突然、瞬空シュンクウさんがツバサに会いに来て言ったんだ。

「以前よりは、マシな面構えになりましたな。けれどまだまだです。
ツバサ様、あなたに下剋上の一環として任務を与えましょう。私の祖国へ行き、我があるじの護衛を務めて頂きたい。
それを完璧に成し遂げられた後、もう一度再戦致しましょう」

……
…………そんな訳で。
ツバサは瞬空シュンクウさんの祖国である、蓮華国レンカこくへ行く事になった。
蓮華国には"アメフラシ"と呼ばれ天候を操る事が出来る不思議な巫女みこが居て、その巫女は毎年雨不足やらの天候に困る地方を訪れて、水不足を解消したりするそうだ。
つまり、ツバサの今回の任務はそのアメフラシの巫女に付いて、彼女の身を護ったり世話をしたりする事。

国の大切な主を護るその仕事は、本来は瞬空シュンクウさんの役目らしい。
それをツバサに任せると言う事は……。瞬空シュンクウさんも色んな意味で本気だと言う事だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】ツインクロス

龍野ゆうき
青春
冬樹と夏樹はそっくりな双子の兄妹。入れ替わって遊ぶのも日常茶飯事。だが、ある日…入れ替わったまま両親と兄が事故に遭い行方不明に。夏樹は兄に代わり男として生きていくことになってしまう。家族を失い傷付き、己を責める日々の中、心を閉ざしていた『少年』の周囲が高校入学を機に動き出す。幼馴染みとの再会に友情と恋愛の狭間で揺れ動く心。そして陰ではある陰謀が渦を巻いていて?友情、恋愛、サスペンスありのお話。

美味しい料理で村を再建!アリシャ宿屋はじめます

今野綾
ファンタジー
住んでいた村が襲われ家族も住む場所も失ったアリシャ。助けてくれた村に住むことに決めた。 アリシャはいつの間にか宿っていた力に次第に気づいて…… 表紙 チルヲさん 出てくる料理は架空のものです 造語もあります11/9 参考にしている本 中世ヨーロッパの農村の生活 中世ヨーロッパを生きる 中世ヨーロッパの都市の生活 中世ヨーロッパの暮らし 中世ヨーロッパのレシピ wikipediaなど

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

離婚したので冒険者に復帰しようと思います。

黒蜜きな粉
ファンタジー
元冒険者のアラサー女のライラが、離婚をして冒険者に復帰する話。 ライラはかつてはそれなりに高い評価を受けていた冒険者。 というのも、この世界ではレアな能力である精霊術を扱える精霊術師なのだ。 そんなものだから復職なんて余裕だと自信満々に思っていたら、休職期間が長すぎて冒険者登録試験を受けなおし。 周囲から過去の人、BBA扱いの前途多難なライラの新生活が始まる。 2022/10/31 第15回ファンタジー小説大賞、奨励賞をいただきました。 応援ありがとうございました!

俺のチートって何?

臙脂色
ファンタジー
 西暦2018年より138年前、西暦1880年1月バミューダトライアングルにて、一隻のイギリス海軍の船が300人の乗員と共に消失した。  それが異世界ウォール・ガイヤの人類史の始まりだった。  西暦2018年9月、その異世界に一人の少年が現れる。  現代知識が持ち込まれたことで発展した文明。様々な国籍の人間が転生してきたことで混ざり合った文化。そこには様々な考え方も持った人々が暮らしていた。  そして、その人々は全員『チート能力』と呼ばれる特異な力を身に宿していた。 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・地名等はすべて架空であり、実在するものとは一切関係ありません。 カクヨムにて現在第四章までを執筆しております! 一刻も早く先の展開が知りたい方はカクヨムへ!→https://kakuyomu.jp/works/1177354054885229568

【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい

梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。

死亡フラグだらけの悪役令嬢〜魔王の胃袋を掴めば回避できるって本当ですか?

きゃる
ファンタジー
 侯爵令嬢ヴィオネッタは、幼い日に自分が乙女ゲームの悪役令嬢であることに気がついた。死亡フラグを避けようと悪役令嬢に似つかわしくなくぽっちゃりしたものの、17歳のある日ゲームの通り断罪されてしまう。 「僕は醜い盗人を妃にするつもりはない。この婚約を破棄し、お前を魔の森に追放とする!」  盗人ってなんですか?  全く覚えがないのに、なぜ?  無実だと訴える彼女を、心優しいヒロインが救う……と、思ったら⁉︎ 「ふふ、せっかく醜く太ったのに、無駄になったわね。豚は豚らしく這いつくばっていればいいのよ。ゲームの世界に転生したのは、貴女だけではないわ」  かくしてぽっちゃり令嬢はヒロインの罠にはまり、家族からも見捨てられた。さらには魔界に迷い込み、魔王の前へ。「最期に言い残すことは?」「私、お役に立てます!」  魔界の食事は最悪で、控えめに言ってかなりマズい。お城の中もほこりっぽくて、気づけば激ヤセ。あとは料理と掃除を頑張って、生き残るだけ。  多くの魔族を味方につけたヴィオネッタは、魔王の心(胃袋?)もつかめるか? バッドエンドを回避して、満腹エンドにたどり着ける?  くせのある魔族や魔界の食材に大奮闘。  腹黒ヒロインと冷酷王子に大慌て。  元悪役令嬢の逆転なるか⁉︎ ※レシピ付き

処理中です...