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第6章(3)ツバサside
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しおりを挟む俺は両膝を着いて屈むと、上着を脱いで横たわった狸をそっと包みながら抱き締めた。
《いた……いよ。くる、しい……よ……っ》
「っ……大丈夫だ!俺が必ず助けてやるっ!だから、諦めるな!!」
まだ暖かい。
大丈夫だ。絶対に絶対に、死なせたりしないーー!!
強い想いを胸に、狸を抱き締めて立ち上ろうとした。
けれど、その瞬間。
!!ーー……いッ?!
突然漆黒の瞳にズキンッと痛みが走り、俺は再び両膝を地面に着いた。周りの動物達が「どうしたの?」「だいじょうぶ?」と騒ぎだす。
右手で狸を抱いたまま左手で目を押さえ、何とか立ちあがろうとした。
でも、脚に力が上手く入らない。立ち上がる事が出来ない。
嘘、だろっ……。
何でっ……こんな時に、ッ……!!
こうしている間にも、狸の血は流れて体温は落ちていく。一刻も早く病院に連れて行かなくてはならないのに……。
それなのに、まるで身体が自分のものではないかのように言う事を聞かない。それどころか、抱いていた狸を自分の手が勝手に身体から離し、地面にそっと寝かせた。
っ……どういう事だよッ!
動けっ……動けッ!俺の身体ーー……。
《ーー大丈夫だ》
!?ッーー……誰?
それは、初めて聞く声だった。
周りに居る動物達ではない。落ち着いた、そう、獣に近い動物ではなく、おそらく人間に近い生物の声。
その謎の声は、俺に言った。
《私に任せておけば大丈夫だ》
っ……何をっ?
《その狸を助けたいのだろう?
ならば、私に身を委ねろ。信じて、任せろ》
っ……。
分かった……ッ。
不思議と、怖さも、不安も感じない。
何故だかその謎の声を、俺は信用出来ると思った。
そう思ったら、俺は自然と目を閉じて、身体の力を抜いていた。
すると、暖かい"何か"が心から全身に流れ込んでくるような感覚に陥って……。俺は、意識を手放した。
……
…………。
夢を見た気がした。
布団に横たわる、和服を着た、長い黒髪の女性。
顔色は悪く青白い、冷や汗をかきながら苦しそうに呼吸を繰り返している。
ーーっ、大丈夫だ。
私が、必ず助けてやる!例え、この身を全て捧げてもーー……。
その女性を見て、"俺"はそう強く思った。
そう、思ったんだ……、……。
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