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第6章(3)ツバサside
3-1
しおりを挟む胸の中に灯った光が、臆病な俺の心を修復してくれたような気がした。
今なら何でも出来る気がするーー。
俺はズボンのポケットにポケ電をしまうと、別荘を睨むように見つめる。
今日こそ進めなかった場所へ足を踏み入れ、能力に関するどんなヒントでもいいから掴んで帰るんだ。
そう心に決めて、再び別荘内へ向かおうとするとーー……。
《ーーツバサ!》
「!……え?」
名前を呼ばれて歩みを止める。
すると、一羽の小鳥がとても慌てた様子で俺の周りを飛び交って言った。
《たいへんたいへん!おねがい、たすけて!》
……
…………。
詳しい事はよく分からなかったが、「こっちこっち」と案内する小鳥の跡を追う。暫く走り、茂みを抜けると、正面に見えた崖の下で「だいじょうぶ?」「だいじょうぶ?」っと言いながら動物達が溜まっていた。
何だ?と、思い、動物達が溜まっている場所まで行き、その取り囲んでいる中心に目をやるとーー……。
「!!っーー……おい!大丈夫かっ?!」
一匹の狸が、大きな岩に下半身を挟まれていた。
おそらく崖崩れに逃げ遅れて巻き込まれたのであろう。
「待ってろっ……すぐに退かしてやる!」
幸いその岩は、人間の俺ならば退かせる程の大きさと重さだった。狸も、まだ息はある。
でも、岩を退けて、俺は思わずゾクリッとしてしまった。
潰された両脚。
おそらく骨は粉々に折れて、出血もまだ止まっていない。
今から急いで山を降りて病院に連れて行っても、命が助かるかわからない。それに、この脚は……。
素人である俺が見ても、もう元に戻らないのが分かってしまう程酷い怪我だった。
自力で生きてはいけない事。それは野生動物にとって例え命が助かっても、絶望を意味する……。
《ツバサ、どうしよう?》
《すごくいたそうだよ……》
《たぬきさんくるしそう。しんじゃうの?》
死ぬーー……?
その言葉が、妙に頭に響いた。
ドクンッ、ドクンッと全身が心臓になったように震えて……。何だか、昔……。まるで似たような光景を見た事があるかのような、錯覚に陥る。
《たす……けて、……》
ーー死なせて、たまるかッ!!
"それ"は自分の心の叫び声なのに、誰かが同時に叫んだようにも感じた。
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