102 / 231
第5章(3)ジャナフside
3-4
しおりを挟む翌日ーー。
「……さてと。ここから先は、この中だな」
「!……えっ?ここに入るのっ?!」
昨夜休憩したポイントから歩いて辿り着いたのは、なんと洞窟。
行手を塞ぐでっかい崖に、大きな怪物が口を開けたような穴が空いていて……。ここがどうやら入り口らしい。チラッと中を覗くが、薄暗くて先が見えない。
「……。
ば、化け物とか……いたり、しないよね?」
「んー……居るとしても、狼か熊じゃないか?」
「狼っ?!熊ッ……?!」
ツバサはサラッと言ったけど、ボクは想像したら怖くなってしまい顔が青ざめる。
狼や熊を実際に見た事はないけど、本で読んだり人から聞いた話ではすごく危ない肉食動物だって事は知っていたから……。
ついつい足を竦ませていると、そんなボクを見たツバサが尋ねる。
「ここで待ってるか?」
「えっ?」
「大体危険な動物は夜行性だったり暗闇が好きだから、真昼間の明るい場所の方が安全だろうし。それに、ここの方が広いし逃げ場所もある。
あ、何なら銃とかボウガンとか置いてくけど」
「で、でも……」
「地図見るとそんなに広くねぇし……。1時間~2時間待っててくれたら戻って来られると思うからさ」
ツバサはそう言って、ボクに微笑った。
その表情からは全然不安や恐怖を感じなくて……。やっぱりツバサはすごいと思うと同時に、ボクは少し違和感を覚える。
「……ツバサは、怖くないの?」
「!……え?」
「だって、狼とか熊とか……。
あ、まさか戦った事がある、とか?」
慣れている、と言うのはおかしな表現かも知れないが、落ち着き払っている彼を見て思わずそう尋ねた。
だって、ツバサはまるで……狼や熊を危険だと、感じていないように見えたから、……。
すると、ツバサは「プッ」と吹き出して笑った。
「あははっ、まさか!
さすがにそんな任務は今まで受けた事ないし、俺はどっちかって言うと戦闘向きじゃないし。
ま、仮に遭遇したら隙を作る程度に攻撃して、怯んだ間に逃げるかな!」
「あ、……そう、だよね」
そんな彼を見て、少しホッとする。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
【完結】聖獣もふもふ建国記 ~国外追放されましたが、我が領地は国を興して繁栄しておりますので御礼申し上げますね~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
婚約破棄、爵位剥奪、国外追放? 最高の褒美ですね。幸せになります!
――いま、何ておっしゃったの? よく聞こえませんでしたわ。
「ずいぶんと巫山戯たお言葉ですこと! ご自分の立場を弁えて発言なさった方がよろしくてよ」
すみません、本音と建て前を間違えましたわ。国王夫妻と我が家族が不在の夜会で、婚約者の第一王子は高らかに私を糾弾しました。両手に花ならぬ虫を這わせてご機嫌のようですが、下の緩い殿方は嫌われますわよ。
婚約破棄、爵位剥奪、国外追放。すべて揃いました。実家の公爵家の領地に戻った私を出迎えたのは、溺愛する家族が興す新しい国でした。領地改め国土を繁栄させながら、スローライフを楽しみますね。
最高のご褒美でしたわ、ありがとうございます。私、もふもふした聖獣達と幸せになります! ……余計な心配ですけれど、そちらの国は傾いていますね。しっかりなさいませ。
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
※2022/05/10 「HJ小説大賞2021後期『ノベルアップ+部門』」一次選考通過
※2022/02/14 エブリスタ、ファンタジー 1位
※2022/02/13 小説家になろう ハイファンタジー日間59位
※2022/02/12 完結
※2021/10/18 エブリスタ、ファンタジー 1位
※2021/10/19 アルファポリス、HOT 4位
※2021/10/21 小説家になろう ハイファンタジー日間 17位

30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。
ただ、愛されたいと願った。
そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。
◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。

どうやら貴方の隣は私の場所でなくなってしまったようなので、夜逃げします
皇 翼
恋愛
侯爵令嬢という何でも買ってもらえてどんな教育でも施してもらえる恵まれた立場、王太子という立場に恥じない、童話の王子様のように顔の整った婚約者。そして自分自身は最高の教育を施され、侯爵令嬢としてどこに出されても恥ずかしくない教養を身につけていて、顔が綺麗な両親に似たのだろう容姿は綺麗な方だと思う。
完璧……そう、完璧だと思っていた。自身の婚約者が、中庭で公爵令嬢とキスをしているのを見てしまうまでは――。

聖女だったけど魔王にジョブチェンジしました。魔獣たちとほっこり生活を満喫します。
棚から現ナマ
ファンタジー
聖女リーリアは婚約者である王太子リカルドにより、偽の聖女だと断罪される。
えん罪を着せられたリーリアは、あろうことか獣や魔獣が出没する”魔の森”へと捨てられるのだった。
攻撃や身を護る手段を持たないリーリアは…… なんだかんだあって、魔王になり、魔獣や魔物たちとワチャワチャ楽しく暮らしていくのでした。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
【完結】恋は、終わったのです
楽歩
恋愛
幼い頃に決められた婚約者、セオドアと共に歩む未来。それは決定事項だった。しかし、いつしか冷たい現実が訪れ、彼の隣には別の令嬢の笑顔が輝くようになる。
今のような関係になったのは、いつからだったのだろう。
『分からないだろうな、お前のようなでかくて、エマのように可愛げのない女には』
身長を追い越してしまった時からだろうか。
それとも、特進クラスに私だけが入った時だろうか。
あるいは――あの子に出会った時からだろうか。
――それでも、リディアは平然を装い続ける。胸に秘めた思いを隠しながら。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる