74 / 231
第4章(4)ミライside
4-2
しおりを挟むヴァロンさーーーん……ッ!!!!!
忘れてた。
そうだ、この人はこう言う人だった。
夢の配達人の時はあんなに豹みたいに鋭いのに、アカリさんが絡むと猫みたいに甘々になるんだよな。
ヴァロンさんとの再会で何かが変わると思ったけど、大きな間違いだった。
目の前のこの人は、もう僕が憧れて目指した夢の配達人じゃない。
そう思ったら、「失礼します」って、回れ右をしてすぐに帰りたかった。
……、……でも。
「……大丈夫ですよ」
「え?」
「舞台行って来て下さい。
ツバサ君とここで留守番してますから」
残念そうに苦笑いしてるヴァロンさんを見たら、僕は心にもない事を言っていた。
「きっと、まだ会ったばっかりだからツバサ君も警戒してるんだと思います。
少しずつ仲良くなっていきますから、安心して下さい」
子供と仲良くなる気なんて、サラサラない。
ただ、ヴァロンさんの力になりたい。
僕の心はそれだけだった。
「マジか?」
「ミライ君、本当にいいの?大変じゃない?」
「大丈夫ですよ、余裕です。妹の面倒だってみてるんですから」
嘘ばっかり。
妹の面倒なんて、夢の配達人の仕事に必死で数回しかみた事なければ、家にも滅多に帰らないし、そんなに仲良くもない。
でも、どうせ誰も気付かない。
僕が嘘吐きなんて、誰もーー……。
「じゃあ、お言葉に甘えて行って来てもいいか?」
「はい」
「ミライ君、本当にありがとう!
何かお土産買ってくるわね!あ、冷蔵庫にある物とか遠慮なく食べて!」
「そんな、気にしないで下さい。
さ、急いで支度して下さい。舞台、始まっちゃいますよ」
「あ!ほんとだ!急がなきゃ~」
……
…………パタパタと忙しく準備をして、ヴァロンさんとアカリさんは出掛けて行った。
さてと、今から舞台を観て、久々って言ってたしゆっくりデートしてくるんだろうな。おそらく三、四時間は帰って来ない。
ヒナちゃんとヒカル君も学校だし、夕方まで帰って来ないよな。
そんな事を考えながら見送った玄関からリビングに戻ろうと振り返ると、ツバサは扉に隠れながら僕を見ていた。
泣きはしないんだな、不思議と。それに、僕に全く興味がない訳ではなさそうだ。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?
いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、
たまたま付き人と、
「婚約者のことが好きなわけじゃないー
王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」
と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。
私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、
「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」
なんで執着するんてすか??
策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー
基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。
【完結】恋は、終わったのです
楽歩
恋愛
幼い頃に決められた婚約者、セオドアと共に歩む未来。それは決定事項だった。しかし、いつしか冷たい現実が訪れ、彼の隣には別の令嬢の笑顔が輝くようになる。
今のような関係になったのは、いつからだったのだろう。
『分からないだろうな、お前のようなでかくて、エマのように可愛げのない女には』
身長を追い越してしまった時からだろうか。
それとも、特進クラスに私だけが入った時だろうか。
あるいは――あの子に出会った時からだろうか。
――それでも、リディアは平然を装い続ける。胸に秘めた思いを隠しながら。


幼馴染の勇者パーティーから「無能で役立たず」と言われて追放された女性は特別な能力を持っている世界最強でした。
window
ファンタジー
田舎の貧しい村で育った6人の幼馴染は、都会に出て冒険者になってパーティーを組んだ。国王陛下にも多大な功績を認められ、勇者と呼ばれるにふさわしいと称えられた。
華やかな光を浴び、6人の人生は輝かしい未来だけが約束されたに思われた。そんなある日、パーティーメンバーのレベッカという女性だけが、「無能で役立たず」と言われて一方的に不当にクビを宣告されてしまう。
リーダーのアルスや仲間だと思って信頼していた幼馴染たちに裏切られて、レベッカは怒りや悔しさよりもやり切れない気持ちで、胸が苦しく悲しみの声をあげて泣いた――

愛しくない、あなた
野村にれ
恋愛
結婚式を八日後に控えたアイルーンは、婚約者に番が見付かり、
結婚式はおろか、婚約も白紙になった。
行き場のなくした思いを抱えたまま、
今度はアイルーンが竜帝国のディオエル皇帝の番だと言われ、
妃になって欲しいと願われることに。
周りは落ち込むアイルーンを愛してくれる人が見付かった、
これが運命だったのだと喜んでいたが、
竜帝国にアイルーンの居場所などなかった。

拝啓、王太子殿下さま 聞き入れなかったのは貴方です
LinK.
恋愛
「クリスティーナ、君との婚約は無かった事にしようと思うんだ」と、婚約者である第一王子ウィルフレッドに婚約白紙を言い渡されたクリスティーナ。
用意された書類には国王とウィルフレッドの署名が既に成されていて、これは覆せないものだった。
クリスティーナは書類に自分の名前を書き、ウィルフレッドに一つの願いを叶えてもらう。
違うと言ったのに、聞き入れなかったのは貴方でしょう?私はそれを利用させて貰っただけ。

聖女だったけど魔王にジョブチェンジしました。魔獣たちとほっこり生活を満喫します。
棚から現ナマ
ファンタジー
聖女リーリアは婚約者である王太子リカルドにより、偽の聖女だと断罪される。
えん罪を着せられたリーリアは、あろうことか獣や魔獣が出没する”魔の森”へと捨てられるのだった。
攻撃や身を護る手段を持たないリーリアは…… なんだかんだあって、魔王になり、魔獣や魔物たちとワチャワチャ楽しく暮らしていくのでした。
揺れる想い
古紫汐桜
恋愛
田上優里は、17歳の春。 友達の亀ちゃんの好きな人「田川」君と同じクラスになって隣の席になる。 最初は亀ちゃんの好きな人だから……と、恋愛のキューピットになるつもりで田川君と仲良くなった。でも、一緒に時間を過ごすうちに、段々と田川君の明るくて優しい人柄に惹かれ始めてしまう。 でも、優里には密かに付き合っていた彼氏がいた。何を考えているのか分からない彼に疲れていた優里は、段々と田川君の優しさと明るさに救いを求めるようになってしまう。そんな優里に、田川君が「悩みがあるなら聞くよ」と、声を掛けてきた。「田上は、なんでも一人で背負い込もうとするからな」優里の気持ちを掬い上げてくれる田川君。でも、田川君は亀ちゃんの想い人で……。 タイプの違う二人の間で揺れ動く優里。 彼女が選ぶのは…… 。
イラストは、高宮ロココ様に描いて頂きました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる