片翼を君にあげる②

☆リサーナ☆

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第2章(3)ツバサside

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舞台『月姫の祈り』の初日がいよいよ明日となった。
舞台稽古も舞台のセットも最終調整で、ついさっきまで役者も裏方も慌ただしく動き回って大変だった。

俺の方も今から最終調整。
の、前に。控え室でウィッグを外し、着替えてメイクを落として、黒いアイレンズから白金色のアイレンズに替えて、素の姿に戻る。
ちなみに、女装する際に使っている黒いアイレンズは今回の為にホノカさんに無理を言って急遽作ってもらった物。そしてそれを届けてくれたのがジャナフ。
お使いに来ただけだった筈の彼が、いつの間にか裏方で働く事になっていた事には最初驚いたけど、これはおそらく最高責任者マスターの策略。ジャナフに届け物をさせて、俺の仕事ぶりを見学させようと言う思惑に違いない。

今まで俺にとって"友達"とは幼い頃から付き合いがある、いわゆる幼馴染みかランやライみたいな親戚しかいなくて、そんな中でジャナフはこの年齢になって初めて出来た友達だった。
知り合ってまだ間もないのが嘘の様に彼とは仲良くなるのはあっという間で、一緒にいると楽しいし居心地も良い。

しかし、普段ならいいが今回は大切な任務中。その最中にジャナフが側にいる事で、自分の中に心の緩みが出てしまうのではないか?と、最初不安にも思った。
けど、それは大勘違いで……。

「!……ツバサ!お疲れ様!」

荷物をまとめ控え室から出ようと扉を開けると、正面の廊下の壁側に座っていたジャナフがサッと立ち上がり、俺の姿を見るやいなやパッと嬉しそうに微笑う。

「お疲れ様、ジャナフ。
なんだ、まだ帰ってなかったのか?」

「うん!ツバサを待ってたんだ!
裏方の仕事一緒にやってる人に美味しいラーメン屋さんの話聞いてねっ、ツバサと食べに行きたくて!それで~……」

俺が声を掛けると、更に嬉しそうなジャナフ。その姿は飼い主の帰りを今か今かと待っていた、まさに忠犬。ブンブンと振る尻尾が、彼のお尻に見える気がして笑いが込み上げてくるが何とか堪える。
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