片翼を君にあげる②

☆リサーナ☆

文字の大きさ
上 下
28 / 231
第2章(2)ジャナフside

2-2

しおりを挟む

護ってやりたい。
すぐさまその震える肩を抱き締めて、"大丈夫だよ"と言ってあげたいーー。

そんな想いが浮かんで、慰める相手役の男に羨ましいと、嫉妬の感情を覚えた。

げつ!私をここから連れ去ってッ……』

『おうっ、当たり前だ!』

相手役に説得されて、ようやく女の子が自分の気持ちを告げたところで「カーット!良かったよ~!」と言う団長さんの言葉が掛かって、演技が終わる。

でも、ボクはまるで魔法にかかったままのように女の子から視線を逸らせない。
そんな、ポーッと見惚れるボクの時間が再び動きだすのはーー……。


「ーー!……お!ジャナフ、久しぶりっ!」

ッーー!?
……、……え、っ???

舞台上の女の子と瞳が重なって、名前を呼ばれた瞬間だった。
長い黒髪とは対照的な白金色の瞳。ボクはその眼差しを知っていた。それに、ボクを"ジャナフ"って呼ぶ、あの声は……。

「!!ーー……も、もしか……して。
……、……。ツ、ツバサ~~~ッ?!」

首を少し傾けて微笑むその表情が親友の笑顔とピッタリ重なり、ボクはさっきまで自分が見惚れていた女の子の正体がツバサだと確信した。

彼が綺麗な顔立ちなのは知ってる。
けど、長い黒髪のウィッグを被り、ピンク色の着物を纏い、うっすら化粧をしたその姿は本当に美しくて……。何よりも……。

「ど、どう言う事なの~その姿っ???
それに、ツバサさっきの声って……」

容姿に驚いたのは勿論だが、何よりも驚き不思議だったのが声だ。さっき舞台上で演じていた時のあの声。それは普段のツバサの声とは全く似ても似つかなく違っていて、彼があの声を出していたなんて信じられなくて……。

「あ、わりっ!まだ稽古の途中なんだ。
もう少しで休憩だからちょっと待ってて」

色々聞きたい事はあったけど、ツバサは団長さんに呼ばれるとボクに「ごめん」って仕草をして去って行ってしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

拝啓、大切なあなたへ

茂栖 もす
恋愛
それはある日のこと、絶望の底にいたトゥラウム宛てに一通の手紙が届いた。 差出人はエリア。突然、別れを告げた恋人だった。 そこには、衝撃的な事実が書かれていて─── 手紙を受け取った瞬間から、トゥラウムとエリアの終わってしまったはずの恋が再び動き始めた。 これは、一通の手紙から始まる物語。【再会】をテーマにした短編で、5話で完結です。 ※以前、別PNで、小説家になろう様に投稿したものですが、今回、アルファポリス様用に加筆修正して投稿しています。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

愛する貴方の心から消えた私は…

矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。 周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。  …彼は絶対に生きている。 そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。 だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。 「すまない、君を愛せない」 そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。 *設定はゆるいです。

【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~

tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。 番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。 ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。 そして安定のヤンデレさん☆ ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。 別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

処理中です...