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第9章

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前回奪った砦と、水の本城のちょうど間に位置する広い平原。
遮るものは何もない見通しのいい場所。
互いに軍を率いて、一定の距離を保ちながら俺とガーネットは先頭で向かい合っていた。

ガーネットは馬から降りると、自軍をその場に残して自ら先に中央に歩み出した。
俺も黒炎から降りると、みんなをその場に留まらせ中央に……。ガーネットに歩み寄った。

互いの距離が、あと十メートルといった所だろうか。
俺達は歩みを止めて顔を合わせた。綺麗な水色の瞳に見つめられて、本心が今にも暴かれそうになる。

「……感謝致します」

ガーネットが、微笑みながら口を開いた。
いつも俺を癒してくれた声が、沁みる。

「一騎討ちの申し入れ、受けて頂けるのですね?」

「……。はい。
軍は動かさない。約束、します」

お前に嘘ばかり重ねてきた俺。
だが。この約束だけは、守ろう。

瞳を逸らさず見つめていると、ガーネットは腰に差していた剣を抜いて……。スッと俺に剣先を向けるように構えた。

「……この度の戦。
魔法ではなく、剣での勝負を提案致します」

そう言う彼女にザワッと驚いた様子を見せるのは俺達ではなく、水の軍の方だった。
しかし、ガーネットは俺を見据えたまま言葉を続ける。

「……私は。……。
私が剣を学んだのは、ある人への想いからでした。
その人の力になりたい、役に立ちたいと……。必死に、今日まで積み重ねてきました」

それはまるで、愛の告白のようなガーネットからの決意の言葉だった。

「……だから。っ……。
魔法は使わず、水神の力は借りず……。自分自身の力で決着をつけたいんです」

俺達は、同じ気持ちだった。

炎と水の……。
国の戦いではなく、俺とガーネットの戦い。
己の全てを懸けた、戦い。
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