68 / 85
第8章
8-4
しおりを挟む「自由に、生きてくれ。
これが俺の、最後の命令だ」
俺は目を閉じて、ゆっくり頭を下げた。
別れの挨拶を済ませた俺が、暫くそのままでいると……。
「ーー自由、か。
では。私が自らの意志で貴方様に付いて行くという選択肢は、認めてもらえるという事ですね?」
俺の耳に届く、アルトの信じられない言葉。
「え?」と声にならない声。
顔を上げると、アルト、メル、みんなが……。俺を見て、微笑んでいた。
「クウォン様は何か勘違いしていらっしゃる。我々は初めから、自由でした。
誰かに命じられたからではない。自らの意志で、貴方様と共に在りたいから……お側に居たのです」
メルの言葉に、他の隊長や兵士達が頷く。
そして、まるで目の前のみんなが一つになったように……。合図もないのに、一斉に跪いて頭を下げた。
「我々は、炎の国の炎の軍ではありません。クウォン様、貴方様の軍!
我々は、貴方様の手足なんですッ……!!」
みんなのその姿に、表情に……。自分はなんて馬鹿だったんだろう、と気付く。
「いつものように、言ってください。
”行こう!みんな!”って!
我々は、そのお言葉を待ってるんです!!」
みんなの言葉に、想いに……。
やっと、分かった。
俺のこの10年間に、無駄な事なんて何一つなかった。
夢も、恋も、何一つ叶えられなかった俺だけど……。ここに確かに、俺の幸せはあった。
ガーネットは例え俺の傍に居なくても、大切なものを残してくれた。
その宝石のように、”実り”と”深い絆”を俺に確かに与えてくれていた。
「ーーありがとう」
俺は目の奥から……。いや、心の奥底から溢れそうな熱い想いを込めて言った。
「……よし!
行こう!みんなッ……!!」
俺の言葉に「はっ!!」と、活気に満ちた返事が返ってくる。
欠けた者は、1人もいなかった。
みんな、俺の最後の戦いを見守ってくれる。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
【完結】旦那様は元お飾り妻を溺愛したい
春野オカリナ
恋愛
デビュタントでお互いに一目惚れしたコーネリアとアレクセイは5年の婚約期間を終えて、晴れて結婚式を挙げている。
誓いの口付けを交わす瞬間、神殿に乱入した招からざる珍客せいで、式は中断・披露宴は中止の社交界を駆け巡る大醜聞となった。
珍客の正体はアレクセイの浮気相手で、彼女曰く既に妊娠しているらしい。当事者のアレクセイは「こんな女知らない」と言い張り、事態は思わぬ方向へ。
神聖な儀式を不浄な行いで汚されたと怒った神官から【一年間の白い結婚】を言い渡され、コーネリアは社交界では不名誉な『お飾り妻』と陰口を叩かれるようになる。
領地で一年間を過ごしたコーネリアにアレクセイは二度目のプロポーズをする。幸せになりたい彼らを世間は放ってはくれず……
浮気の代償~失った絆は戻らない~
矢野りと
恋愛
結婚十年目の愛妻家トーマスはほんの軽い気持ちで浮気をしてしまった。そして浮気が妻イザベラに知られてしまった時にトーマスはなんとか誤魔化そうとして謝る事もせず、逆に家族を味方に付け妻を悪者にしてしまった。何の落ち度もない妻に悪い事をしたとは思っていたが、これで浮気の事はあやふやになり、愛する家族との日常が戻ってくると信じていた。だがそうはならなかった…。
※設定はゆるいです。
【完結】お飾りではなかった王妃の実力
鏑木 うりこ
恋愛
王妃アイリーンは国王エルファードに離婚を告げられる。
「お前のような醜い女はいらん!今すぐに出て行け!」
しかしアイリーンは追い出していい人物ではなかった。アイリーンが去った国と迎え入れた国の明暗。
完結致しました(2022/06/28完結表記)
GWだから見切り発車した作品ですが、完結まで辿り着きました。
★お礼★
たくさんのご感想、お気に入り登録、しおり等ありがとうございます!
中々、感想にお返事を書くことが出来なくてとても心苦しく思っています(;´Д`)全部読ませていただいており、とても嬉しいです!!内容に反映したりしなかったりあると思います。ありがとうございます~!
恋人に捨てられた私のそれから
能登原あめ
恋愛
* R15、シリアスです。センシティブな内容を含みますのでタグにご注意下さい。
伯爵令嬢のカトリオーナは、恋人ジョン・ジョーに子どもを授かったことを伝えた。
婚約はしていなかったけど、もうすぐ女学校も卒業。
恋人は年上で貿易会社の社長をしていて、このまま結婚するものだと思っていたから。
「俺の子のはずはない」
恋人はとても冷たい眼差しを向けてくる。
「ジョン・ジョー、信じて。あなたの子なの」
だけどカトリオーナは捨てられた――。
* およそ8話程度
* Canva様で作成した表紙を使用しております。
* コメント欄のネタバレ配慮してませんので、お気をつけください。
* 別名義で投稿したお話の加筆修正版です。
選ばれたのは美人の親友
杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる