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第6章

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二人に攻撃を任せ、少し後ろに下がったクウォンは、目を閉じて魔法の詠唱えいしょうを口遊み始める。

「!っ……マズい!
炎の王子を止めろッ!!」

グラン将軍が命ずると、控えていた水の兵達が声を上げながらクウォンを止めようと向かって行く。

ーーでも、無駄だ。

私は知っている。クウォンの詠唱の、早さ。
炎の神に愛されている彼は、最速で魔法が使える。

クウォンがニヤッと笑って地面に触れた途端、水の兵達のすぐ真下が地割れして、真っ赤な溶岩が噴き出た。
戦場に響き渡る悲鳴。攻撃を食らった兵士達はバタバタとその場に倒れていく。


……
…………もう、退き返せない。
水の軍を護る事が出来るのは、クウォンに対抗出来るのは私しかいない。

魔法なんて、一度も使った事はない。
でも、心の底から不思議と湧き上がってくる。私は、その詠唱を口遊んだ。


「我が炎に焼かれろ。
両親と同じようになッ……!!」

クウォンがそう叫んで今度は天に手をかざすとたちまち暗雲が空を包んで、まるで大きな激しい雷が落ちる前のような音を響かせると、真っ赤な無数の隕石が水の砦全体に向かって降ってくる。

直撃したら、全滅ーー。


「っ……そんな事、させないわッ!!」

”さようなら、クウォン”ーー……。

心の中で呟いて、私は持っていた短剣で長い髪をバサッと切り落とすと……。水の魔力を一気に開放して、クウォンの魔法にぶつけた。

水の砦全体を水の壁が覆って、炎の隕石を受け止める。水の神の力を受け継いだ私の方が上の筈の力。

……けど。
受け継いだばかりで上手く扱えない私の力は不安定で、隕石を抑えている水の壁が、ヒビ割れそうだ。

「っ……きゃあッ!!」

二つの強大な魔力がぶつかり合って、地面は激しく揺れ、しっかり立っていられない。
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