スノウ2

☆リサーナ☆

文字の大きさ
上 下
573 / 589
番外編①紫夕side

①-5-5

しおりを挟む
***

「ーー……っ、やっぱ、しっかり洗わないと駄目だな」

広場の水道で汚れと格闘すること数十分。
俺は持っていたタオルを水で濡らし、あおいのズボンについた汚れを拭おうとしたが、やはり完璧に綺麗にする事は難しかった。

「本当にごめんな。新しいズボン代、弁償するから……」

「そんな!ほんとにいいんです。今日は広場で遊ぶ、って聞いてたから、汚れても大丈夫な服装で来てたんです。
それにこれ位の汚れ、洗濯機で洗えばすぐに落ちますから!」

頭を下げる俺に、あおいは明るい声と笑顔でそう言ってくれた。
あおいが良い子で本当に良かった。けど、俺はやはり紫愛シアが彼女に対して泥団子を投げつけた事が、ものすごくショックだった。

やっぱり、俺が甘やかして育ててしまったからだろうかーー……?

大事に大事にし過ぎて、少々過保護にしてしまったから自分が1番で、他の人を想いやる心が欠けてしまったのかも知れない。

「……ごめんな。家では、あんな風に物を投げたりする子じゃねぇんだ。
ただ、今まであんまり身内としか過ごさせてこなかったから……その、……」

でも、そう落ち込む俺に、あおいが言った。

紫夕しゆうさん。紫愛シアちゃんは、悪くないですよ?
紫愛シアちゃんは、きっと自分のお母さんの居場所を守りたかっただけなんです」

「ーー……え?」

お母さんの居場所を、守りたかったーー……?

一体、どう言う事だ?と疑問に思う俺に、あおいは話してくれた。俺が飲み物を買う為に、あの場を離れていた間にあった事を……。

聞けば、広場で楽しそうに遊ぶ親子の姿を、紫愛シアがじっと見つめていたそうだ。
手を左右に立つ父親と母親に片方ずつ繋いでもらって、間に居る子供は持ち上げてもらったり、ブラブラとブランコみたいに揺らしてもらったりしていて、とても嬉しそうで……。それを見る紫愛シアの瞳は、あおいから見てとても羨ましそうだったとか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あなたの隣で初めての恋を知る

ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。 その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。 そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。 一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。 初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。 表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

【完結】嘘はBLの始まり

紫紺
BL
現在売り出し中の若手俳優、三條伊織。 突然のオファーは、話題のBL小説『最初で最後のボーイズラブ』の主演!しかもW主演の相手役は彼がずっと憧れていたイケメン俳優の越前享祐だった! 衝撃のBLドラマと現実が同時進行! 俳優同士、秘密のBLストーリーが始まった♡ ※番外編を追加しました!(1/3)  4話追加しますのでよろしくお願いします。

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

火駆闘戯 第一部

高谷 ゆうと
ファンタジー
焼暴士と呼ばれる男たちがいた。 それは、自らの身体ひとつで、人間を脅かす炎と闘う者たちの総称である。 人間と対立する種族、「ラヨル」の民は、その長であるマユルを筆頭に、度々人間たちに奇襲を仕掛けてきていた。「ノーラ」と呼ばれる、ラヨルたちの操る邪術で繰り出される炎は、水では消えず、これまでに数多の人間が犠牲になっていった。人々がノーラに対抗すべく生み出された「イョウラ」と名付けられた武術。それは、ノーラの炎を消すために必要な、人間の血液を流しながらでも、倒れることなく闘い続けられるように鍛え上げられた男たちが使う、ラヨルの民を倒すための唯一の方法であった。 焼暴士の見習い少年、タスクは、マユルが持つといわれている「イホミ・モトイニ」とよばれる何かを破壊すべく、日々の鍛錬をこなしていた。それを破壊すれば、ラヨルの民は、ノーラを使えなくなると言い伝えられているためだ。 タスクは、マユルと対峙するが、全く歯が立たず、命の危機にさらされることになる。己の無力さを痛感したその日、タスクの奇譚は、ゆっくりと幕を開けたのだった。

処理中です...