スノウ2

☆リサーナ☆

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番外編①紫夕side

①-4-3

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「でも、悪いけど……僕はあの女性ひとを母親だと思えない。思いたく、ないっ」

「ーー……っ」

ドキッと、した。
何故ならその表情かおがあまりにも、弥夜やよいの本当の父親である響夜きょうやにそっくりで……。まるで、響夜きょうやが怒っているように、感じたんだ。

きっと、そうだったんだろう。
響夜きょうやは、弟であるゆきをとても大切に想っていた。
兄弟として。そして、最愛の存在として……。

弥夜やよいも同じだ。
ゆきの事を本当の母親のように慕い、また紫愛シアの事もとても大切に想っている。
その揺るぎない想いが、優柔不断な俺の胸を締め付けたんだ。

弥夜やよいに見つめられたまま、俺は言葉を返す事も、視線を逸らす事も出来なかった。
するとそこへ……。

「にーに!にぃ~にぃ~!!」

「!っ、……紫愛シア。どうしたの?」

可愛い足音と共に紫愛シアがこちらに駆けて来て、俺達はハッとした。
何も知らない紫愛シア弥夜やよいの脚にギュッと飛び付いた後、見上げて小さな拳を見せるように掲げる。

「これ、あえるー!」

「?……何?」

「きれーな、いちー!にーにに、あえるー!」

よく見ると、小さな掌に握られているのは真っ白な石。
弥夜やよいはそれに気付くと、プッと笑って……。さっきまで俺に向けていたものとは全く違った、優しい、柔らかい表情を紫愛シアに向けた。

「ありがとう。綺麗だね。
本当に……本当に、綺麗だね」

弥夜やよいは屈んで石を受け取ると大切に握り締めて、もう片方の手で紫愛シアの頭を優しく撫でながら微笑んでいた。

大切なものを、揺るぎなく真っ直ぐに見つめる瞳ーー。

何故、大人になると、あれこれ悩んでしまうんだろうな?
人目を気にしたり、顔色を伺ったり……。色んな、余計な感情を巡らせて、勝手に難しくして優柔不断になっていく。
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