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最終章(6)紫夕side
24-6-5
しおりを挟む海斗ーー……?
驚いた。
でも、俺が顔を向けても海斗は俺を見ず、ただ、前方に居るスノーフォールを見つめていた。
初めは、海斗のその様子に半信半疑だった。
敵なのか、それとも味方なのかーー?
総指揮官の立場である俺が自分を見失わないよう、止めてくれたのか。
はたまた、自らがスノーフォールを討伐したいからなのか……。
度重なる戦いの中で。この、荒れ狂った世界の中で、人は変わってしまう。
俺は、それを身を持って知っていたからだ。
そしてその答えは、すぐに、分かる。
『スノーフォールを討伐した者には、無論、十分な恩賞を与えるぞ!』
その総司令官の言葉に、俺と海斗と杏華以外に残っていた三人の、顔色が変わる。
そして、「おい、マジかよっ?」「どうする?っ」「力合わせたら、殺れるんじゃねぇかっ?」って、期待を弾ませる声を後押しするように、総司令官は続けた。
『今就いている役職からの昇格は勿論。皆の家族や身内の者にも、特別な待遇や生活を保証しよう!
……どうだ?素晴らしい未来が待っているぞ!』
それは、完全に甘い誘惑だった。
戦い続きで、明日、どうなるか分からない人間が1番欲しいと願っている保証だった。
人間が誰でも持っている、安心感が欲しいと言う欲。その当たり前の感情を責める事は誰にも出来ない。
「俺、やるぜ!」
「ああ、オレも!」
「幸い、あのスノーフォール大人しいし。今のうちに、俺の射程のある魔器で翼を撃ち抜いて飛べなくしてやろう!」
「!っ、お、おい……ッ!!」
隊員達の言葉に、「やめろッ!!」と、止めに入ろうとした時はすでに遅かった。
欲に支配された隊員は、ガチャガチャとマシンガン型の魔器を装弾すると、狙いも十分に定めずスノーフォール目掛けて発砲した。
だが、距離を十分に詰めずに発砲した弾丸だ。
スノーフォールの力を持ってさえすれば、避ける事も、吐息で弾丸を凍らせる事も可能だっただろう。
けど、俺には分かっていた。
雪が、絶対に抵抗しない事を……。
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