スノウ2

☆リサーナ☆

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最終章(6)紫夕side

24-6-4

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その瞳は、とても戦闘をした直後のスノーフォールとは思えない穏やかな水色。
普通のスノーフォールならば真紅色に染まっている筈の瞳に、やはりゆきなんだ、と俺は再認識する。
そして、魔物化してしまっても、ゆきは俺達を覚えているのだ。

ゆきがここに来たのは、おそらくたまたまではない。
魔物の争いに気付いて、この町が被害を受ける事を読んで……。更に、紫愛シア達の居る森に火の粉が降り掛からないよう、助けに来てくれたのだ。

かつて、魔物化しながらも自分を護ろうとしてくれた母親サクラさんと同じようにーー……。

そして、繰り返される歴史ーー。

静かな戦場に、耳に着けている小型通信機の声が、響く。

望月もちづき総指揮官!現場に残っている隊員各位、住民の避難ご苦労だった。
立て続けで申し訳ないが、追加で緊急討伐をお願いする』

それは、守護神ガーディアンの総てをまとめる総司令官の声。

『現場に現れたスノーフォールを討伐せよ!
皆も知っての通り、スノーフォールは幻龍。新しい魔器マギの開発だけでなく、間違いなくこれからの守護神ガーディアンの未来!……いや、皆の未来へのかてとなるぞ!!』

その言葉に、ドクンッと胸が高鳴り……。俺の頭の中に浮かんだのは、かつて、魔物化してしまったゆきの母親。サクラさんを斬ってしまった時の記憶だった。

今も、鮮明に覚えてる光景。
あの時の俺は、命令に従う事が。
魔物を狩る事が、明るい未来へと続くと思って、信じていた。
ただ、"俺達人間"が明日を掴む為に必死なんだと思っていた。

ーー……けど。今は、違う。

俺は、ゆきに出逢って。
ゆきを知って、一緒の時間を重ねて……。
本当に護ると言う事と、幸せの意味を知った。

だからーー……。

"俺には、出来ません"ーー。

しかし。そう言って、斬月ざんげつを地面に突き刺そうとした瞬間だった。斬月ざんげつを握る俺の手を、隣に居た海斗かいとがグッと握って……止めた。
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