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最終章(6)紫夕side
24-6-3
しおりを挟むが、コカトリスの注意がスノーフォールに注がれている今がチャンス。
俺はこの隙に新人隊員や疲労が著しい隊員達を、少しでも戦場から移動させる事にした。
すると、スノーフォールはその俺の動きを読んでいたかのようにコカトリスを持ち上げて飛ぶと、隊員達の退路とは逆の方向に向かって地面に投げつけた。
まるで、俺達からコカトリスを離すようにーー。
俺は、その様子を見て確信する。
間違いない。
あのスノーフォールは雪だ、とーー……。
「出来る事なら、また一緒に戦いたかったな」
確信した瞬間。
そう言う、雪の声が、聞こえた気がした。
俺は……。
いや、俺と海斗。住民の避難を終え、戦いに加わろうと戻ってきてくれた杏華。そして、残った隊員達と共に戦いの末を見守った。
力の差は歴然だ。
しかし、地面に叩き付けられたコカトリスはヨロヨロとしながらもその目にはまだ闘志が残っており、最後の力を振り絞ってスノーフォールを道連れにしようと考えているようだった。
ここまで追い詰められたら、コカトリスがやるべき事は一つ。猛毒の吐息を放つ以外になかった。
猛毒の吐息が放たれれば、この辺り一帯は毒の霧に覆い尽くされてしまう。本当ならば、一刻も早く逃げなくてはならない。
ーーだが、恐るるに足らず。
コカトリスが猛毒の吐息を吐こうとした瞬間に、先程スノーフォールに噛まれて出血していた部分に変化が表れていた。
パキパキパキパキッ……と、言う音と共に傷口、血液が凍っていき……。それは見る見るうちにコカトリスの全身へと広がっていった。
出来上がったのは、剥製を超えたまさに美しい芸術品。
あっという間に凍りつき、氷の像となってしまったコカトリス。こうなってしまっては、もうなす術はない。
そんな相手にスノーフォールは再び雪玉の吐息を放つと粉々に砕き、全てを終わらせた。
ヒュゥ……ッ、と吹く風に乗って、コカトリスの残骸が美しく輝くダイヤモンドダストとなって辺りに舞う。その中で、スノーフォールは暫く佇んで空を見上げていた。
そして、ダイヤモンドダストが消えると……。スノーフォールは、戦いを見守っていた俺達の方へと視線を向けた。
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