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最終章(5)紫夕side
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しおりを挟む「っ、マジかよ……」
来やがった。
おそらく、コイツは縄張り争いに負け、森から弾かれた方だ。
「フーッ、フーッ!」っと、とても鳥とは思えない程に荒い息遣いに、ギョロッとした赤い目。完全に、興奮状態の怒り状態だ。
コカトリスは上級の魔物。こうなったら、新人や経験の浅い隊員は戦力にならないのは目に見えて分かる。
しかし、まだ完全に避難が終わってない以上。コカトリスの注意をこちらに引き付けたままでいなくてはいけない。
そうなると、俺がやるべき事はーー……。
俺は、コカトリスを刺激しないよう声を潜めて海斗に語り掛けた。
「……海斗。
退却だ。俺が合図したら、他の隊員を連れて逃げろ」
「!……紫夕さんっ?」
俺の言葉に、察した海斗の瞳が揺れていた。
けど、海斗は今ではもう俺の第1部隊に居た頃の海斗ではなく、怪我で戦場を離れていた杏華の代わりに隊長を務め上げていた程の実力だ。
経験を積んで、筋肉もついて体格も良くなり……すっかり男らしくなった、頼りになる隊員の一人。だから……。
「……生きて、帰る為の作戦ですよね?」
たくさんの言葉は必要ない。
俺は、横目で海斗を見て微笑んだ。
「ーーああ。当たり前だ」
俺の言葉と表情に、海斗の瞳は一瞬で落ち着く。力強く頷く姿に、俺も気を引き締めた。
当たり前だ。
俺も、ここで死ぬ訳にはいかねぇんだーーッ!!
そう覚悟を決めて、退却の号令を出そうとした瞬間だった。
ギシャアァァァァァーーー……ッ!!!!!
空気がビリビリッと震える激しい鳴き声。
一瞬、その凄まじい鳴き声に目を閉じ、耳を塞いだ俺達だったが……。俺は、その鳴き声にハッとして、すぐに上空を見上げた。
コカトリスも、自らの辺りも暗くなるその異様な光景に背後を振り向く。
そこに、居たのはーー……。
「ーー……、っ……雪?」
一頭の、美しい美しい、純白の白龍だった。
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