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最終章(3)紫夕side
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しおりを挟むその笑顔に惹きつけられて、俺の乱れていた心はスッと鎮まっていった。
雪が続ける。
「そんなの、無理に……決まってるじゃない。
オレ、魔物になったら理性がなくなって、紫夕の事を喰べちゃうかも知れないよ?」
「!……ぁ、……」
「紫夕よりも他の魔物に魅力を感じて、その魔物と番になっちゃうかも知れないよ?」
「!っ、そ……そんな……っ」
雪にそう言われて、俺は「ハッ!」としたり、明らかに「ガーン!」と言う表情をしてしまう。
そしたら雪は、また、更に嬉しそうに微笑んで……俺に抱きついて言った。
「でも、……っ、嬉しい」
「雪っ……」
「ありがとう、紫夕!
大好き。本当に、本当に……大好きだよっ」
愛おしい、と言う言葉以外は見つからない感情が胸いっぱいに広がって、涙となって俺の瞳から溢れ出した。
離したら、もう最後ーー……。
避けられない現実を、分かりたくないのに感じていた。
だから、俺は雪を抱き締めたまま離さなかった。
そしたら、雪がまた少し、意地悪そうに……。でも、微笑みながら言った。
「約束、破った罰。
俺に、人の心が残っているうちに……。もう一度、抱いて?」
おかしいな。
そんな気分じゃない筈だったのに、一瞬で、心に熱が灯った。
吸い寄せられるように、俺は雪と口付け……。次第に、深く、深く、重ねていった。
……
…………。
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