スノウ2

☆リサーナ☆

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第23章(4)紫夕side

23-4-3

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紫夕しゆうさんが命を懸ける戦いは、ここじゃない。
紫夕しゆうさんには、紫夕しゆうさんにしか出来ない事がたくさんある。それなのに、親父の事で貴方が手を汚す必要はない。
この世界の未来の為に……。いや、ゆきや子供の為に。そうでしょう?」

そう言った奴の声と表情が今までに見た事がない位に切なく、儚い気がして……。全然似てない、って思ってたのに、それが、ほんの少しゆきに似てる気がして……。俺は、響夜きょうやの提案の全てを受け入れた。

……
…………そして、迎えた今日。
俺はまた、響夜きょうやに悔しい気持ちにさせられる。

「い、やだ……ッ。
響夜きょうやも、っ……一緒じゃ、なきゃ!ぃ……ッ、嫌だぁーー……ッ!!!」

俺と繋いだ手を放して、ゆき響夜きょうやの後を追って捕まえると、そう泣き叫んだ。

知ってるか?
ゆきがあんな風に感情を出したり、我が儘を言う事なんて、滅多にねぇんだ。
ゆきは賢くて、状況を理解して、我慢して……。取り乱すなんて事、ねぇんだよ。

そんなゆきが、我を忘れて響夜きょうやを引き止めて、泣き叫んでいた。

分かるだろ?
ゆきにとって、響夜きょうや、お前は特別なんだよ。

……ずりぃ。
ずりぃ、だろ……っ、ムカつく。
ゆきにあんな風に気持ちをぶつけられたんだ。
お前だって叫べばいいじゃねぇか。
お前だって行動すればいいじゃねぇか。

ゆきの事、「好き」って言って俺から奪いに来いよッ……!!!!!

そしたら俺も、全力でお前と向き合ってやり合えたのに……。

「ーー頼むよ。
僕の、大切な……弟なんだ」

……それなのに。
そんな風に託されたら、もう、何も言えねぇじゃん……ッ。

俯いた瞬間に地面に落ちた涙を、オレは歯を食いしばって進む足で踏み付けていた。

俺が響夜アイツに勝つ方法は、もう一つしかない。
未来まえに進んで、ゆき達が幸せになれる時代を創る事しかなかった。

……
…………。
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