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第23章(4)紫夕side
23-4-2
しおりを挟む馬鹿みたいな、プライドだ。
男として、俺は響夜に頼りたくないし、負けたくなかったんだ。
それなのに、響夜は更に言った。
「親父との決着は、僕がつけます」
「!……なに?」
「親父の事は僕に任せて、紫夕さんはその間にサク……っ、雪達を……」
「ーーふざけんなッ!!」
その言葉には、色んな意味でカッとなった。
何より強かったのは、きっと復讐心。橘は俺の親父、三月の仇だ。そう知った瞬間から……。一年前に、親父を魔物化して悪事を働いた時から、俺は橘だけは自分がブッ潰す、って決めてたんだ。
そこだけは、どうしても他の誰にも譲りたくなかった。自分の手で終わらせたかった。
けど、響夜は冷静に言いやがった。
「紫夕さんが、親父の事を許せないのは分かります。
けど、どんな悪人であろうと人を斬れば……貴方の心に、永遠に闇が残ってしまう。そんな気持ちで、守護神を……。この世界を変えられますか?」
「!……っ」
鋭い、核心を突いた言葉。
響夜の言う通りだった、と素直に受け入れられるまでには時間がかかったが、この時に何も言い返せなかった時点で、俺は図星を突かれていたんだ。
俺が感情的になって橘をヤッた所で、後から拭う事が出来ない傷を心に負っただろう。
例えどんな意味があっても、どんなに相手がクズであろうと、人の命を奪う、と言う計り知れない重みがある事に変わりはない。
それにどんな理由があろうとも"人の命を奪った奴"に、みんなが疑いもなく付いてきてくれる筈もない。
そんな、俺の事を全て理解した上で、響夜は言っていたんだ。
負けた、って……思ったよ。
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