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第23章(3)響夜side
23-3-6
しおりを挟む「弥夜。
男と男の約束、だぞ?」
「っ……!」
僕の言葉に、弥夜は俯いていた顔をやっと上げた。
泣いてると思ったのに、必死に堪えて……。弥夜は頷いた。
もう、思い残す事はないーー。
僕はもう一度、弥夜の頭をポンポンッと叩くように撫でると立ち上がり、背を向けてその場を駆け出した。
目指すは親父の元。
決着を着ける為に、僕は向かった。
……
…………。
……………。
……………
思い浮かんだのは、あの日の事。
「響夜君。
君の、息子だよ。名前を付けてあげないとね」
そう言って朝日に小さな赤ん坊を渡された瞬間。
昔、辞書を見ていて、ふと目についた漢字が浮かんだんだ。
『弥』は、弓が緩む様子を表していて、それが『わたる』『すみずみまで』『どこまでも広がる』といった意味を持つ。
漢字の意味から『広い』や『行き渡る』というイメージがされ、広いという意味からは、『心の広さ』『大らかさ』『洞察力』。
行き渡るからは、『発展』『成長』『豊かさ』など、力強さを感じるポジティブなイメージがあると言われているらしい。
名付けに使う際には、
『心の広い人になってほしい』。
『優れた洞察力で、社会で活躍する人になってほしい』。
そして、『豊かな人生を送ってほしい』。
……そんな意味が、込められる。
ああ、そっか。
あの瞬間から、僕はお前を愛してたんだな。
なぁ、弥夜。
大丈夫。お前は、この場所から抜け出せなかった僕とは違う。
初めてこの手に抱いたお前は、僕に似たクセ毛が更に産毛で柔らかくて……僕にはタンポポの綿毛のように思えたんだ。
どうかこの想いを咲かせて。
綿毛になって自由に飛んで。
新しい地で、広く、強く、根付いて生きますようにーー……。
……
………………。
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