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第23章(3)響夜side
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しおりを挟むそれなのに、更に……ズルいなぁ。
「雪を連れて戻る時は、その子供も一緒だ。人間と魔物が共存出来る世界を創る為にも、そこは譲れない。
何とか方法を考えて……。全てはそれからだ」
その言葉を聞いた瞬間。
「なんだよ、それっ……」って思わず声が漏れて、バカらしくて笑えたのに……。何故か心は暖かくなって、涙が出た。
負けた、って……思った。
良かったな、サクヤ。
お前が選んだ奴は、間違いなく最高で……。お前の、運命の相手だよ。
全ての、諦めが……。
いや、全ての決意がついたーー。
だから、……。
「ーー味方なんて必要ないッスよ」
「っ、響夜……?!」
「以前に言ったでしょう?
アンタに、サクヤは渡しませんから」
もう、迷ったりしない。
「……なんてね。
冗談です。僕が……力を貸します」
自分を信じよう。
必ず自分に出来る事がある、と。
「その代わり、僕の頼みを聞いて下さい」
そして、もう一度願おう。
大切な人が、幸せに生きてくれる未来をーー……。
……
…………
そして僕は、紫夕さんと約束した。
望むのは、サクヤとお腹の赤ん坊の幸せ。
僕の息子であり、人型魔物である弥夜の幸せ。
その為に、人型魔物に詳しい担当医の朝日も一緒に連れて行き、必ず護る事。
後の事は……。橘の事は僕に任せて、何があっても振り返らず、ただサクヤ達を連れて逃げ切る事だけを考えろ。
……そう話して、決行する日を決めた。
それが今日だ。
今日で、全てが終わる。
僕が研究所に向かい、騒ぎを起こし、親父の注意を引き付けている間に、紫夕さんにサクヤ達を連れて行ってもらう予定だった。
内緒でこんな事を計画してる、ってバレたら、サクヤは絶対に怒ると思った。
だから、必死に必死に……今日まで隠して、平然を装って一緒に生活してきた。
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