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第23章(3)響夜side
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しおりを挟むそしたら、
「……なるほど、これは面白いかも知れん。
失敗作かと思ったが、これは使えるかもなぁ」
赤ん坊の成長記録を見て、親父は笑っていた。
その事を思い出して、なかなか次の言葉を発せないでいると、サクヤが言葉を続ける。
「オレも、そこまで馬鹿じゃないよ。もう、橘さんがどんな人なのか……分かってる。
だから、オレには抗う事しかないんだ。この子が橘さんの新しい被検体にされないよう、護ってやらなきゃいけないんだ!」
強い瞳。
強い声。
覚悟を決めて、サクヤが言っているんだと分かった。
ああ、きっと……。
サクヤを連れて逃げた時、サクラもこんな風だったんだろうな。
そう、思ってしまう程に。
この時のサクヤはますます、サクラに似ていた。
けど、……違った。
「響夜が、もし、オレとマリィを信じてくれるなら……。弥夜君の事も、オレ、マリィへの手紙に書く!だからーー……」
「ーーお前は?」
「!……え?」
「お前は、どうするんだ?」
僕は、サクヤにそう尋ねていた。
バカな質問だった。
子供と一緒に居たい筈だ。
紫夕さんや仲間の元に帰りたい筈だ。
ここに残って僕と暮らす、なんて選択肢……。天国と地獄程に違うだろう。
そんな、初めから比べるまでもない質問をした自分を本当にバカだと思った。
その質問をしたのは、僕の愚かな弱さ故。
昔、サクラがサクヤを連れて……。自分を残して去って行ってしまった事を、未だにトラウマに感じていたからだろう。
答えなんて初めから分かっていながら、過去の小さな傷に僕は未だに怯えていたんだ。
でも、そんな僕に、サクヤは言った。
「オレは、ここに居るよ」
「……」
「何処にも行かない。
ここに残って、響夜と一緒に戦う!」
「ーー……っ」
その瞬間。
僕がどれほどの幸福に包まれたか、お前は知らないだろうな。
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