スノウ2

☆リサーナ☆

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第23章(2)雪side

23-2-4

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***

ーー……ん、っ?
な、に……?誰か……話してる?

耳に届く、人と人の話し声。
優しく自分を包んでくれていた温もりがない事に気付いて、オレはゆっくり目を開けた。

ボヤける視界に映る人影。
そして、耳に入ってくる声。
次第に意識がハッキリしてきて、オレはこの場に誰が居るのか気付いた。

「ーー……っ、紫夕しゆう?」

何故、彼がここに居るのか分からない。
自分はまだ眠りの中で、夢に居るのかとさえ思って混乱する。
ゆっくりベッドから上半身だけを起こして見つめていると、オレが目を覚ました事に気付いた紫夕しゆうは少し気不味い表情を浮かべていて……。オレに歩み寄って来たのは、眠りにつく前のラフな服装から着替えて、任務に行く際に着る黒いロングコートに身を包んだ響夜きょうやだった。
何が起こっているのか分からないオレに、目の前に来た響夜きょうやが手を取って言う。

「来い」

「……え?」

「今すぐ、お前は紫夕しゆうさん達と一緒にここを離れるんだ」

「……」

何を言われているのか、分からなかった。
もう一度、紫夕しゆうの方を見ると……。紫夕しゆうの手には、おそらくオレの荷物。そして、よく見るとその傍に、荷物を持った朝日あさひ先生と、俯いてリュックを背負った弥夜やよい君が居る事にも気付く。

……な、に?
ここを、離れる……って、……?

まだ、オレには理解出来ない。
いや、したくなかったのかも知れない。

そんな、呆然としているオレを響夜きょうやは抱き上げると、そのまま紫夕しゆうの傍まで連れて行ってくれた。
そして、ゆっくりと床に足を着けて降ろしてくれると、オレの手を……紫夕しゆうに握らせて、ギュッと固く上から包み込む。

「頼みましたよ、紫夕しゆうさん」

「……。ああ」

響夜きょうやの言葉に、紫夕しゆうが力強く応えていた。
その様子に、もはや言葉で説明されなくとも……。この状況がどんなものか分かった。
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