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第23章(1)雪side
23-1-2
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***
12月半ばーー。
「……美味い」
「!……え?」
突然、ある日突然にポツリと呟かれたからオレは自分の耳を疑った。
だって、一緒に暮らし始めて二ヶ月が過ぎ。彼の口からそんな言葉を聞いたのは初めてだったから……。
「美味い、ったんだよ。煮物」
「あ、っ……うん。あ、ありがとう」
もう一度言ってくれたけど、驚き過ぎて喜ぶタイミングを逃す。
オレはただボー然と、一緒に食卓を囲む目の前の響夜を見つめてしまっていた。
響夜が洋食より和食が好きで、薄味が好みなのは何となく気付いてた。
月に数回、魔物としての本能を満たす為に響夜と弥夜君と一緒に生肉を食べる日以外はオレがご飯を作っていたから……。けど、
ど、どうしたんだろう?
どう言う風の吹き回しかな?
「美味い」なんて、響夜には一生言ってもらえないと思ってた。
そんな響夜を見て、嬉しそうにニコニコする弥夜君に対しても、
「笑ってねぇでちゃんと飯食え」
「はーい!」
以前の彼なら「ニヤニヤすんな、殺すぞ」って絶対に言っていたのに、言葉が優しくなった気がする。
そんな響夜を見てると、胸の奥がチクリッと痛んだ。
少し前に、「何度でも迎えに来る」って紫夕に言われて……。喜びを感じて、今も期待している自分が、心の奥底に居るからだ。
っ、何が「裏切れない」……だよ。
後ろめたさを感じてる時点で、オレは響夜を裏切ってる……っ。
紫夕がここに来て会った事も、オレは響夜に話せていない。
一緒に行かなかったとは言え、それは、心の中では裏切っていると言う証に感じてならなかった。
12月半ばーー。
「……美味い」
「!……え?」
突然、ある日突然にポツリと呟かれたからオレは自分の耳を疑った。
だって、一緒に暮らし始めて二ヶ月が過ぎ。彼の口からそんな言葉を聞いたのは初めてだったから……。
「美味い、ったんだよ。煮物」
「あ、っ……うん。あ、ありがとう」
もう一度言ってくれたけど、驚き過ぎて喜ぶタイミングを逃す。
オレはただボー然と、一緒に食卓を囲む目の前の響夜を見つめてしまっていた。
響夜が洋食より和食が好きで、薄味が好みなのは何となく気付いてた。
月に数回、魔物としての本能を満たす為に響夜と弥夜君と一緒に生肉を食べる日以外はオレがご飯を作っていたから……。けど、
ど、どうしたんだろう?
どう言う風の吹き回しかな?
「美味い」なんて、響夜には一生言ってもらえないと思ってた。
そんな響夜を見て、嬉しそうにニコニコする弥夜君に対しても、
「笑ってねぇでちゃんと飯食え」
「はーい!」
以前の彼なら「ニヤニヤすんな、殺すぞ」って絶対に言っていたのに、言葉が優しくなった気がする。
そんな響夜を見てると、胸の奥がチクリッと痛んだ。
少し前に、「何度でも迎えに来る」って紫夕に言われて……。喜びを感じて、今も期待している自分が、心の奥底に居るからだ。
っ、何が「裏切れない」……だよ。
後ろめたさを感じてる時点で、オレは響夜を裏切ってる……っ。
紫夕がここに来て会った事も、オレは響夜に話せていない。
一緒に行かなかったとは言え、それは、心の中では裏切っていると言う証に感じてならなかった。
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