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第22章(5)紫夕side
22-5-2
しおりを挟む杏華の言う事は、もっともだった。
けど、今回ばかりは俺にも言い分があり、雪を強引に連れて来なかった事は正解だと思っている。
マリィが「まあまあ」って、杏華を落ち着ける為に紅茶を淹れて持って来てくれたタイミングで、俺はもう一度口を開く。
「ちっこいのが居たんだ」
「え?」
「雪が今住んでる小屋みたいな家に、ちっこい子供が居た。
あの研究所に居るって事は、おそらくそいつも雪と同じ人型魔物だろう。雪は今、きっとそいつと暮らしてんだ」
俺の言葉に、杏華とマリィは驚いたように目を見開いていた。当然だ。
雪や響夜以外に、人型魔物がいるーー。
その事実は、俺達人間からしたら普通は悍ましい事だろう。人間の知識を持ちながら、魔物の力を持つ強人なんて何よりも恐ろしい化け物だ。
……けど。俺はーー……。
「俺は、雪だけじゃなく、その子供も救ってやりたい」
あの時見かけた子供を思い出して、俺は言った。
ちっこい身体で、不安そうに、怯えて俺を見てた。
その姿は、人間の子供と全く変わらない。普通に人間に紛れて暮らしていたら、誰もあの子が人型魔物だなんて気付かないだろう。
「普通に、暮らさせてやりたいんだ。
雪もきっと、自分だけ幸せになる事なんて望んでない」
雪は、俺と帰る事を頑なに拒んだ。
俺にはその理由が、俺と暮らす事を不安に思ってる以外に何かあるように感じてならなかった。だから……。
「雪を連れて戻る時は、その子供も一緒だ。人間と魔物が共存出来る世界を創る為にも、そこは譲れない。
何とか方法を考えて……。全てはそれからだ」
自分の夢の為に。
雪の夢と幸せの為に。
俺は、そう決意を固めて二人に告げた。
すると、暫く黙っていた杏華とマリィだったが……。
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