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第22章(2)紫夕side
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しおりを挟む自分を殺し、感情を殺し……。雪を今すぐに迎えに行きたい衝動も抑え込んで、俺はただひたすらにがむしゃらだった。
守護神に戻り、"騙されていた"、"洗脳され利用されていたフリ"をして同情を買い……隊員に戻って、功績を上げ続けた。
そして、その結果手に入れたんだ。
隊員のすべてをまとめる、総指揮官と言う地位をーー……。
「……だが。まだまだこれからだ」
飲み干したビールの空き缶を握り潰して、俺は俯いた。
今はまだ、雪を迎えに行けない。
一歩一歩、前には進んでいるが……。夢の実現には、あまりにも時間がかかり過ぎる。
そうしている間に、雪は橘の元で参ったりしてしまわないだろうか?
お腹の子は、無事に育っているんだろうか?
そんな想いばかりが浮かぶ。
そして、空いた心の隙間から不安が広がる。
そんな時は……。
「迎えに行っても、いいんじゃないかしら?」
「!……え?」
マリィが、暖かい言葉と優しい笑顔を向けてくれた。
マリィは俺に直接触れたりはしない。けど、手を握り締められたり、肩を支えてもらったり、抱き締めてもらうのと同じような温もりを感じる。
「勿論、本部で一緒に住む、って訳にはいかないと思うわ。
けど、例えば……。ホラ!毎日一緒に居られなくても、少し離れた場所に隠れ家を建ててそこで雪ちゃんと暮らすの!
紫夕ちゃんはお休みの日に、そこに週末婚みたいに通って……。あ!普段はアタシが雪ちゃんと一緒に暮らすわ!」
「は?」
「なによ、不安?
これでも、アタシだって紫夕ちゃん達が居なくなっちゃってから勉強してたのよ?」
マリィはそう言って、自分の机の引き出しから分厚いファイルを取り出して持ってくると、俺に差し出した。
なんだ?と思って、開いて中を見ると……。そこに記されていたのは人型魔物の身体の事についてだった。
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