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第22章(1)雪side
22-1-6
しおりを挟む「ありがとう、嬉しい」
素直な言葉と、笑顔が溢れ出していた。
「髪は……また伸ばすよ。だからこれ、貰ってもいい?
ほら、それまではこうしてブレスレットみたいに使わせてもらうから。ねっ?」
オレは髪ゴムを右の手首に着けて、響夜を見上げながら見せた。
そしたら、最初は驚いたように目を見開いていた響夜だったけど、ハッとしたように咳払いして「好きにしろ」ってボソッと呟いた。
相変わらずぶっきらぼうだけど、微かに赤い耳元。きっと響夜に尻尾が生えてたら大きく振っていそうな雰囲気に、オレは笑みが止まらなかった。
すると……。
「ボク、おじゃまです。ひとりでさきにおフロはいってくるです!」
「!!ッ」
「!!っ、や……弥夜君っ?」
その可愛らしい声に、すっかり弥夜君が側にいる事を忘れていた事に気付く。
でも、ハッとして汗汗とするオレ達をよそに、着替えを持った弥夜君はさすが響夜の息子、と思う程に悪巧みしている笑顔を浮かべて言った。
「おとうさんとゆきさんは、あとでなかよくいっしょにはいっていいですよ~!ごゆっくりです!」
「っ~~~……」
「っ、弥夜!てめぇ、ブッ殺す……!!」
その言葉には、当然な事に響夜はブチ切れ。けど、追いかけられて弥夜君はすごく嬉しそうだった。
……
…………そんな感じで。
響夜と弥夜君は、そのままバタバタした勢いでお風呂に入って行った。
静かになった食卓を一人で片付けていると、ふと、左手の薬指にはめたままだった銀の指輪が目に止まる。
紫夕から貰った、大切な大切な……夫婦の証。
響夜は、指輪に対して何も言わない。
「外せ」とも「捨てろ」とも、何も言わないでくれた。
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