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第22章(1)雪side
22-1-2
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***
「弥夜君、どうかな?」
「!……にあうです!ゆきさんはかわいいから、どんなかみがたもおにあいです!」
「あははっ、口が上手だね」
ある日、オレは背中まで伸びていた髪を肩までの長さで切った。長いままだと何かと邪魔で、毎回結ぶのも、お風呂の度に乾かすのも一手間だからだ。
……それに。
もう、褒めてくれる人もいない。
自分の気持ちを引きずらない為にも。気持ちを切り替える為にも。オレはきっと、サッパリしたかったんだと思う。
じゃないといつまでも、思い出してしまうから……。
「ゆきさん?どうしたですか?」
「!……ううんっ、何でもないよ。
あ、早く片付けて夕飯の用意しないとね」
つい、左手の薬指にはめたままの指輪を見つめて、紫夕の事を思い出してボーッとしてしまった。
声を掛けられてハッとしたオレは、髪を切った際に出たゴミやらを片付けて微笑むと、椅子に掛けてあったエプロンを着けて台所へ向かう。
すると、後からついて来た弥夜君がオレの手を握って言った。
「ボクもてつだうです!」
「え?」
「おてつだいするです!いっしょにやるとたのしいです!」
その優しさと温もりと、何より笑顔がオレの心をいつも救ってくれる。弥夜君が微笑ってくれると、オレも笑顔になれるんだ。
「ありがとう。
じゃあ、お箸とか食器をテーブルに並べてくれる?」
「はいっ!まかせてください!」
賑やかで楽しい雰囲気のお陰で、この家に移ってからはすっかり涙を流す事もなくなった。
忘れちゃいけない。そんな今をオレにくれたのは、響夜だという事を……。
「……あ!おとうさんです!」
食卓に夕飯の準備がほぼ整ったタイミング。その声の直後に、家の扉がガチャッと開いた。
オレは料理の最後の仕上げでお出迎えができなかったけど、足音と匂いで分かる。響夜が帰ってきた。
「弥夜君、どうかな?」
「!……にあうです!ゆきさんはかわいいから、どんなかみがたもおにあいです!」
「あははっ、口が上手だね」
ある日、オレは背中まで伸びていた髪を肩までの長さで切った。長いままだと何かと邪魔で、毎回結ぶのも、お風呂の度に乾かすのも一手間だからだ。
……それに。
もう、褒めてくれる人もいない。
自分の気持ちを引きずらない為にも。気持ちを切り替える為にも。オレはきっと、サッパリしたかったんだと思う。
じゃないといつまでも、思い出してしまうから……。
「ゆきさん?どうしたですか?」
「!……ううんっ、何でもないよ。
あ、早く片付けて夕飯の用意しないとね」
つい、左手の薬指にはめたままの指輪を見つめて、紫夕の事を思い出してボーッとしてしまった。
声を掛けられてハッとしたオレは、髪を切った際に出たゴミやらを片付けて微笑むと、椅子に掛けてあったエプロンを着けて台所へ向かう。
すると、後からついて来た弥夜君がオレの手を握って言った。
「ボクもてつだうです!」
「え?」
「おてつだいするです!いっしょにやるとたのしいです!」
その優しさと温もりと、何より笑顔がオレの心をいつも救ってくれる。弥夜君が微笑ってくれると、オレも笑顔になれるんだ。
「ありがとう。
じゃあ、お箸とか食器をテーブルに並べてくれる?」
「はいっ!まかせてください!」
賑やかで楽しい雰囲気のお陰で、この家に移ってからはすっかり涙を流す事もなくなった。
忘れちゃいけない。そんな今をオレにくれたのは、響夜だという事を……。
「……あ!おとうさんです!」
食卓に夕飯の準備がほぼ整ったタイミング。その声の直後に、家の扉がガチャッと開いた。
オレは料理の最後の仕上げでお出迎えができなかったけど、足音と匂いで分かる。響夜が帰ってきた。
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