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第22章(1)雪side
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しおりを挟むーー僕とお前と弥夜と……。
産まれてくる子供と、一緒に暮らそうーー
響夜のその言葉に頷いてから、一ヶ月も経たないうちに橘さんの研究所がある敷地内に家が建って……。オレ達はそこで生活を始めた。
小さな丸太小屋でそんなに広くないけど、自由に台所を使えて料理も出来るし、何より……。
「ゆきさん!ここにうめていいですかっ?」
「うん。じゃあそこには……この種を植えようか」
家の外に出る事も出来る。
今日は天気が良いから、弥夜君と一緒に種まき。簡単に育てられる野菜やお花を、家の周りに埋める事にしたんだ。
オレの言葉に「はい!」と元気に頷いた弥夜君は、楽しそうにせっせと種を植えていく。手や顔を土で汚しながらも作業するその懸命な姿が、とても可愛らしい。
種蒔きが終わって、オレがポケットから出したタオルで頬についた汚れを拭ってあげると、弥夜君がケラケラ笑いながら言った。
「ゆきさん!くすぐったい~」
「こら~、動かないの!」
楽しい雰囲気につられて、オレも怒り口調ながらもついつい笑ってしまう。
捩られる小さな身体をギュッと捕まえると、そのまま弥夜君は嬉しそうに抱き返してきて、オレのお腹に耳を当てた。
「げんきにそだつといいですね!あかちゃんも、おはなさんたちも!」
「うん、そうだね。
弥夜君、ありがとう」
無邪気で可愛い、優しい言動が泣きたいくらいに嬉しくて……。オレは、幸せを感じ始めていた。
弥夜君はすっかり懐いてくれてオレに甘えてくれるし、お腹の赤ちゃんも朝日先生達のおかげで今のところ順調。
心配されていたオレの体調も今は落ち着いていて、胎内も少しずつ赤ちゃんの成長に合わせて変化が起きてる、って言われた。
日によって腰が痛かったり、下腹部が張るような違和感もあるけど……。ようやく、平穏な時間が訪れている気がした。
そして、響夜とも……、……。
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