455 / 589
第21章(5)雪side
21-5-7
しおりを挟む……けど。
そんなオレを、また響夜は包み込んでくれるんだ。
まだ気絶したままの弥夜君を抱き締めながら俯いていたオレは、突然、身体引き寄せられてギュッと抱き締められた。
弥夜君を抱いたままのオレを抱き締めているのは、……。
「ーー……っ、響、夜?」
「……。無事で、良かった」
「っ……」
優しい言葉と温もりに、また、涙が自然と溢れてきて止まらない。
悲しみや、困惑や、恐怖や、不安や、自己嫌悪……。色んな感情が混ざり、止めどなく出てくる。
そんな、嗚咽を上げながらまるで子供みたいに泣き続けるオレに、響夜が言った。
「親父に、研究所を出られないか頼んでみた。敷地内にはなるが、普通の家で今よりは自由に生活出来る。
……そこで、一緒に暮らさないか?」
優しい問い掛けが、
本当にこのままでいいのかーー?
と、今の状況を悩むオレに答えをくれる。
考えなくてはいけない事はたくさんある。
自分が今歩いているこの人生が、正しいのかは分からない。……でも。
「そこで、僕とお前と弥夜と……。産まれてくる子供と、一緒に暮らそう」
お腹の子供を産みたいと言うオレの気持ちを、誰よりも尊重してそう言ってくれているのが分かった。
「絶対に護ってやる。
……だからお前は余計な事は考えず、自分の身体とお腹の子供の事だけ考えてろ」
きっとオレが様々な想いを巡らせている事も分かった上で、そう言ってくれる響夜の腕の中で……。オレはただただ、頷く事しか出来なかった。
「……やっぱ、泣かせてばっかりだな」
涙でボヤける目に映る、そう言って苦笑いする響夜。
その表情に、オレはやっと本当の響夜を見た気がしてた。
……
…………そして。
オレは、響夜と新しい生活を始めた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
6
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる