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第21章(5)雪side
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しおりを挟む死神を実際に見た事なんてない。
でも、今目の前に居る風磨さんは、そう呼んでもおかしくない程だった。
ここに来るまでに、何人の命を鎌のような槍で奪ってきたのだろうーー?
かつては白銀色の眩い光を纏っていた風乱が、今ではドス黒いモヤを纏い……。その姿もまさに、死神の相方に相応しい鎌そのもの。
ゴクリッ、と息を呑むオレ達の目の前で、風磨さんは風乱を一振りして刀身に付いていた血を払い飛ばすと口を開いた。
「……雪君。君は、僕のモノだ」
コツッ、と靴の音を鳴らして、一歩一歩、近付いてくる。
「僕以外の子を産むなんて、許さない」
ニヤリッ、と笑う表情は完全に心と一致していなくて……。ギョロッとした瞳がオレだけを真っ直ぐに見ていた。
「そんな子供はさっさと始末して……。僕の子供を産んでくれよ」
「ッーー……!!」
ゾワッと震える心と同時に、オレの身体は情けないくらいにガタガタと震え出した。
それは、怖い、と言うより、気持ち悪い、と言う嫌悪感の方が強かったと思う。
表情も、瞳も、雰囲気も……。風磨さんの全てを拒絶しているかのように、オレの心も身体も縮み上がっていた。
お腹の赤ちゃんを護る事が出来るのは、オレだけなのにーー……。
思考が定まらない。
ただ震え上がるだけで、どうしていいのか……。身体も動かない。
そんなオレを見て風磨さんは勝ち誇ったように笑うと、手を差し出しながらどんどん距離を縮めてくる。
「大人しく、僕と来るんだ。言う事を聞けば、僕はこんな狭い場所に君を閉じ込めたりはしない。
素敵な家に、君の欲しい家具でも何でも買ってあげるよ?
そこで、僕と、君と、僕達の子供と素敵な家庭を築こう。……ね?」
言っている言葉とは全く噛み合わない表情。「来るなッ!!」と叫ぶ事さえオレは出来なかった。
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