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第21章(4)雪side
21-4-5
しおりを挟む「?……ゆきさん?
どうしたですか?なにがおかしいですかっ?」
癒されるなぁ……。
首を傾げて尋ねてくる弥夜君は、まるで雨雲を吹き飛ばす太陽みたいだった。
心の中のモヤモヤが、一瞬で消えていったんだ。何も解決した訳じゃないし、分からない事だらけだけど……。オレは自然に笑って、弥夜君を抱き締めていた。
「!……ゆきさん?」
「ごめんね。弥夜君があんまり可愛いから、つい……抱き締めたくなったんだ」
オレがそう言うと、腕の中の弥夜君も「えへへっ」って、笑顔になって、ギュッと抱き返してくれる。
寂しさで不安定だった心が、それだけで満たされた気がした。
「ゆきさん、あったかくていいにおい~!だいすき~っ!」
「ありがとう。オレも、弥夜君の事、大好きだよ」
自分の事を、大好きと言ってくれる人がいるーー。
嬉しくて、涙が出そうだった。
でも、嬉し涙とは言え泣けば心配させてしまうと思ったオレはグッと堪えて、弥夜君に言った。
「じゃあ……。プチトマト、もらおうかな?」
「はいっ!まかせてください!」
ここに連れて来られてから初めて、食事が美味しい、と感じた。
……
…………それから。
弥夜君は毎日毎日、オレの元を訪れて元気をくれた。
一緒に食事をしたり、遊んだり……。弥夜君と過ごす時間が増えた事で、オレは次第に悪い事を考えたり、不安になる事が知らず知らずに減っていった。
「ゆきさん!このおしゃしん、なんですか?」
そしてある日。
棚の上に置きっぱなしにしていた赤ちゃんのエコー写真を見付けた弥夜君が、不思議そうにオレに尋ねてきた。
「それはね、赤ちゃんの写真だよ」
「?……あか、ちゃん?」
「そう。……オレね、お腹に赤ちゃんがいるんだ」
その言葉に弥夜君はキョトンとすると、写真とオレのお腹を不思議そうに交互に見ていた。
そうだよね。
こんな白黒の写真が、まさか赤ちゃんの写真なんて思わないよね。
その姿がまた可愛くて微笑っていると、急にパァッと笑顔になった弥夜君が嬉しそうに言う。
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